本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.8.6

ナチスの金塊

日本では、麻生副総理の発言により「ナチス憲法」が話題になっているが、今回、驚かされたことは、「イギリス」においても「ナチスの金塊」が、大きな物議を醸しているということである。具体的には、今年の「7月1日」に「英国中央銀行総裁」に就任した「カーニー氏」が、「第二次世界大戦の前後に、ナチスが他国から金塊を略奪した事件において、英国中央銀行が手を貸した」という公文書を公表したのである。そして、この点について、「FT紙」が詳細なコメントを発表するとともに、「現在でも、同様の事態が、世界的に展開しているのではないか?」とも述べているのである。

つまり、「1923年のハイパーインフレ」と、その後の「1929年の大恐慌」により、経済的に壊滅状態となった「ドイツ」が、「その後、どのようにして国力を回復したのか?」ということだが、実際には、「武力により他国を侵攻し、力ずくで金塊を奪った」とも言われているのである。そして、「金塊を奪われた国々は、その後、ペーパーマネーに頼らざるを得なくなり、結果として、ハイパーインフレなどの経済的な混乱に見舞われた」という状況でもあったようだが、この点が、現在の金融情勢と、似たような展開になっているのである。

具体的には、「現在、中国が、なぜ、合法的に金を大量に集めているのか?」という点において、「ナチスの金塊略奪事件」が「過去の事例」として挙げられ始めており、結論としては、「金(ゴールド)が、富の源泉である」という「歴史的な事実」が、改めて、認識され始めているのである。別の言葉では、現在の「金融商品」に対して、いろいろな問題点が出始めるとともに、今後、「金利の上昇」が世界的に起きた時に、「どのような事態が訪れるのか?」が、真剣に考えられ始めたようにも思われるのである。

このように、「2007年」から始まった「世界的な金融混乱」については、現在、ようやく、その「本性」を表し始めるとともに、いよいよ、本格的な混乱期に突入することが考えられるようである。つまり、今までは、「目に見えない金融戦争」が起きていたために、ほとんどの人は、その存在に気付くことがなかったようだが、今後、「金融のメルトダウン」や「金利の急騰」が本格化すると、世界中の人々が、大きな影響を受けることが想定されるのである。そして、このことは、「明治維新」や「第二次世界大戦」の時に、「戦時中の興奮状態」を経験した後に、「敗戦」などにより「本当の苦難を味わった状態」とも言えるようだが、不思議な点は、「ほとんどの日本人が、国債価格の暴落に備えておらず、また、真剣に、この点を憂慮していない」ということである。