本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.9.5

アメリカの債務上限問題

8月26日の「ルー財務長官による議会への書簡」を読むと、「米国の債務上限問題」は、きわめて危機的な状況に陥っているようである。具体的には、昨年末から実行されてきた「予算削減に関する非常手段」と引き換えの「一時的な上限棚上げ」に関して、いろいろな問題が発生する可能性が存在するのだが、この書簡では、「10月半ばに、国家の現金が、約5兆円しか残らない」とまでコメントされており、また、「国債価格が暴落すると、国家の資金繰りは、一挙に、現金不足に陥る」とも述べられているのである。

そのために、早急に「債務上限」を引き上げて、今までの「一時的な措置」で使った資金を返済する必要性があるようだが、この時の注意点としては、「本当に、国家の資金繰りは行き詰るのか?」ということであり、また、「債務上限の引き上げ」に成功したとしても、「本当に、このままの状態が継続できるのか?」ということである。つまり、「月間で、約10兆円も、国家債務が増え続けている」という状況下では、「どこかで、必ず、限界点に突き当たる」ということが予想されるのである。

別の言葉では、現在のような「国債の買い手が、主に、中央銀行である」というような状態が、永遠に継続できるはずがなく、間もなく、本当の意味での「金融大混乱」が始まる可能性のことである。具体的には、「年金」や「健康保険」、あるいは、「地方自治体」などから、一時的に資金を流用し、かろうじて、「国家財政」が維持されているような状況に対して、本格的な「市場の反乱」が起きるものと考えているのだが、実際には、「国債価格の暴落により、国債の買い手がいなくなる状態」のことである。

そして、この点について、過去の例を見ると、「1991年のソ連」や「2000年代半ばのジンバブエ」などのように、「ほとんどの国で、同じパターンが起きている」という状況も理解できるのである。つまり、「中央銀行が、国債を買い付ける」という方法が行き詰まりを見せた時に、「国家の資金繰りを、紙幣の増刷で行う」ということだが、この点については、いまだに、ほとんど理解されていないようである。

その結果として、「量的緩和の縮小」が起きると、「世界の資金が収縮し、世界経済は、大恐慌的な状態に陥る」と誤解されているようだが、これからの注目点は、反対に、「量的緩和の縮小は、マネタリーベースを、一挙に、大膨張させる効果がある」という点を理解することだと考えている。そして、この時には、「大量の資金」が、世界的に供給され、「実物資産の価格は、名目的に大暴騰する」という状況も想定されるのである。