本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.10.25

預金神話の崩壊

総務省の発表によると、「9月の全国消費者物価指数(CPI)」は、「価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が、前年同月比0.7%上昇した」とのことである。しかも、「上昇は4か月連続」という状況でもあり、このことは、「日本が、本格的なインフレ時代に突入した」ということを表しているようである。つまり、今までは、強引な「超低金利政策」や「円高政策」などにより、「人為的に、物価が低く抑えられていた可能性」があったようだが、現在では、「アベノミクス」や「黒田日銀総裁の金融政策」により、「実体経済」においても、「インフレ」が、はっきりと見えてきたようである。

換言すると、今までは、「日本人の預金神話」が存在したために、「ゼロ金利」であろうとも、「日本人は、決して、預金を手放そうとしなかった」という状況だったのである。そして、この点については、確かに、「消費者物価が下落している間は、預金の価値が上昇した」とも言えるのだが、このことは、「実体経済」だけの理論であり、「マネー経済」を考慮すると、「的外れの考え方」とも言えるようである。

つまり、「膨大な金融商品」が生み出される過程では、「既存の預金」は「知らないうちに価値が減少していた」という状況だったのだが、「日々の生活に、問題が起きなかったために、ほとんどの日本人は、この点を考慮しなかった」とも言えるのである。しかし、現在では、「預金のゼロ金利」に対して、「消費者物価の上昇」が始まったために、「預金の目減り」が起きているのだが、この点については、「間もなく、大きな混乱を引き起こす可能性」があるようだ。

具体的には、「10年国債の金利が0.6%前後」という状況下で、「消費者物価が0.7%の上昇」という事態は、「どのような経済理論からも、正当化できる状況ではない」とも言えるのだが、現在の日本では、まったく、この点が忘れ去られているようである。そして、間もなく、「大事件の発生により、この歪みが、世の中を揺るがす事態へ変化する」という状況が考えられるのだが、基本的には、「長期金利は、短期金利に物価上昇率を加えた数字」が妥当な水準とも言えるのである。

このように、「長期間のゼロ金利」に慣らされ、また、「日本国債の異常な買い支え」にも、まったく憂慮しない日本国民が、今後、「大幅な円安」や「更なる物価上昇」に直面した時に、「預金神話の崩壊」という事件が起きることが予想されるとともに、「多くの人々が、慌てて、換物運動に走り出す」という事態も考えられるようである。