本間宗究(本間裕)のコラム

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2013.11.26

日銀の出口戦略

11月22日の「衆院財務金融委員会」において、日銀の黒田総裁が「金融緩和の出口戦略」に言及したそうである。具体的には、「保有国債の償還」、「各種の資金吸収オペ」、そして、「付利の引き上げ」などの方法のことだが、このことが意味することは、いわゆる「異次元の金融緩和」が、「いよいよ、行き詰まりを見せてきた可能性がある」ということである。つまり、今までのような、「民間銀行からの借り入れ資金」である「日銀の当座預金残高」を増やすことにより「大量の国債を買い付ける」という、きわめて無謀な金融政策に限界点が訪れたために、新たな展開を模索し始めているようである。

しかし、現時点で残された方法は、古典的な「借金棒引き政策」である「紙幣の大増刷」しか存在しないようにも思われるのである。より詳しく申し上げると、「日銀の当座預金」については、当然のことながら、「残高の膨張には限度がある」という点が指摘できるとともに、「付利の引き上げ」という「借入金の金利を引き上げる」ということは、「日銀の財政状態を、急速に悪化させる可能性」が存在するのである。そのために、今後は、「金利」が付かず、また、「返済期限」の存在しない「日銀券」の大量発行を目論んでいるものと考えているが、このことは、まさに、「亡国の金融政策」とも言えるのである。

つまり、「日銀券の大量発行」が意味することは、典型的な「通貨の堕落」であるとともに、その後に想定されることは、「大幅な円安」と「金利の急騰」でもあるからだ。別の言葉では、「通貨に対する信用」が、完全に失われることにより、「人々が、慌てて、預金などから実物資産へ、資金を移動させる」という動きが想定されるのである。そして、現在の「世界的な株高」は、すでに、この動きが始まったことを意味しているものと考えているが、今後、「最も呑気な日本人」までもが、この行動を加速させた時には、「世界の金融市場が、大きな変化に見舞われる可能性」が存在するのである。

具体的には、本格的な「金融混乱」であり、また、本当の「インフレ(通貨価値の下落)」のことだが、実は、このような状況こそが、日本にまで「信用崩壊の波」が訪れたことを意味しているのである。つまり、表面的には、「円安」や「株高」、そして、「金利高」などの「好景気の状態」に見えるのだが、実際には、既存の「金融システム」や「通貨制度」などが、完全に崩壊を始めているということである。そのために、決して、現在の株高に浮かれることなく、自分の「資産価値の保全」を計ることが大切だと考えているが、やはり、最も安全な資産は、本当の「お金」である「金(ゴールド)」でもあるようだ。