本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2014.1.28

食の安全神話

今回の「アクリフーズの冷凍食品農薬混入事件」については、「食の安全神話」だけではなく、「既存の社会システム」にも、大きな問題提起をしたようである。具体的には、「事件を起こした社員の資質」については、当然のことながら、最も重要な点とも言えるのだが、その他に、「会社の経営方針」や「食品の製造、および、流通システム」について、今後、いろいろな「改善」や「変革」が必要な状況のことである。別の言葉では、「契約社員」を増やすことにより、「短期的な利益」を狙った経営陣が、結局は、「膨大な損失」を抱え、また、「社長の退陣」にまで追い込まれたということである。

あるいは、「2000人以上もの被害者」を出したことにより、今後、「日本の冷凍食品」に対する信頼感が喪失する可能性もあるようだが、この点については、数年前の、「中国における毒物混入事件」と、ほとんど同じ構図だったようである。つまり、「日本」においても、「中国」と同様に、「従業員の不満」が事件を引き起こし、ひいては、「会社の存続」そのものが、危機的な状況に陥る可能性のことである。

このように、現在のような「大量生産、大量消費の社会システム」においては、「一従業員の悪意的な行為」が、その会社の「全従業員」のみならず、「消費者の健康」にまで問題を及ぼすほどの状況となっているのである。つまり、「人々に対する信用」を基にして、現在の「社会システム」が成り立っているわけだが、かつての「物流」においては、「生産者」から「問屋」へ「商品」が売り渡され、その後、「小売店」などから「消費者」へと、その商品が売られる状況だったのである。

そして、この時には、生産者や問屋などの「信用」が、たいへん重要視されたのだが、現在では、「我々の消費する食品が、誰によって、どこで作られ、どのようにして流通するのか?」が、ほとんど見えない状況となっているのである。そのために、これから改善すべき点としては、「高度なコンピューター・ネットワーク」を利用することにより、「より正確な情報が、より迅速に提供されること」だと考えているが、問題は、その時の「提供者の信用」とも言えるのである。

つまり、現在の「金融システム」のように、「政府」や「メガバンク」が主導して、「金利」や「為替」、あるいは、「貴金属」などの商品が、「価格操作されている可能性」が問題視されているような状況下では、「どれほど良い商品」を提供しようとも、「購入する資金」そのものに、大きな問題が出始めることも予想されるのである。