本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.4.24

実体経済への請求権

「日本のマネタリーベース」は、過去20年ほどで、「約50兆円」から「約220兆円」へと、急激な増加をしているが、一方で、「日本のGDP」については、「約500兆円」という水準に留まっている。つまり、「実体経済」が、ほとんど変化していない状況下で、「日銀が供給する資金」が急増しているのだが、このことは、「実体経済への請求権」という観点からは、「国民から国家へと、富が移転している状況」を表しているものと考えている。

具体的には、20年前の「国家」と「国民」との関係を考えると、「約500兆円のGDP」に対して、「国民が約450兆円」、そして、「国家が約50兆円」という「請求権」を持っていたようだが、現在では、この数字が、「国家が約220兆円」にまで増え、そして、「国民が280兆円」にまで減少したことが見て取れるのである。別の言葉では、「お金」とは「商品との交換価値」を意味しており、「実際に、どれほどの商品と交換できるのか?」を考えた場合に、現在では、これほどまでの変化が起きているものと考えられるのである。

ただし、この点については、「金融商品の存在」や「金融政策の変化」などを、より深く考慮する必要性があるために、現時点では、「全体像を把握するための、簡略的な方法」と理解する必要性もあるようだ。しかし、これからの展開を考えると、「国家」と「国民」との関係において、より一層、「富の移転」が激しくなるものと考えており、実際には、「100年ほど前に、経済学者のケインズが、的確に指摘していた事実」が、まさに、実現しようとしているのである。

具体的には、今後、「マネタリーベース」の残高が、「世界的に、大膨張する」、しかも、この方法として、「紙幣の大増刷」が加速した場合には、「ほとんど全ての富が、国家に移転する」という状況が想定されるのである。つまり、「マネタリーベース」の内容が、大きく変化し、現在のような「当座預金」ではなく、今後は、「日銀券」が大量発行されるものと考えているのだが、この時には、「世の中が、大騒ぎの状態となり、国民が慌てだすような事態」もそうていされるようである。

そして、このことが、「通貨の堕落」が意味することであり、また、本当の「インフレ」でもあるのだが、このキッカケとなるのが、やはり、「国債価格の暴落」であり、時間的には、たいへん近づいているようにも思われるのである。