本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.5.16

「美味しんぼ」の波紋

最近、「美味しんぼ」という漫画が、政財界を巻き込んで、世間の話題となっている。具体的には、「数年間の取材」の結果、「福島や大阪で、鼻血を出す人が増えている」ということであり、このことが、「放射能汚染の結果ではないか?」という問題提起のことである。そして、この点については、「マスコミ」も加わり、「事実の真偽」や「風評被害」などの意見が、盛んに戦わされているのだが、この時に重要な点は、「不都合な真実」であろうとも「決して、見過ごさない」という態度だと考えている。

つまり、「真実」を明らかにすることにより、「問題解決」が早まるとともに、「風評被害」も減少するものと考えているのだが、実際には、「抽象的な議論」により、「真実の隠蔽」が行われているようにも感じられるのである。別の言葉では、かつての「企業犯罪」と同様に、「真実が暴露されたら、企業の存続が危うくなる」という考えのもとに、さまざまな「秘密の隠蔽」や「問題の先送り」が行われ、その結果として、「数多くの大企業が破産し、存在そのものが無くなった」というような状況のことだが、今回は、この愚が繰り返されないことを願っているのである。

しかも、今回は、「一企業」の問題ではなく、「日本国家」に関する大問題であるために、一刻も早く、「放射能汚染」や「健康被害」の実情を、具体的な数値で公表することが、「現在の日本」のみならず、「今後の世界」にとっても、たいへん重要なことだと考えている。しかし、実際には、どうしても、「目先の利益」を重視しがちになるのが、「人間の性(さが)」とも言えるようである。

また、これから想定される「最悪の事態」としては、「放射能汚染の実態」が隠されるとともに、「新たな原発事故の発生」だと考えているが、この時には、「日本に住めなくなるような事態」も想定されるのである。そのために、現時点で必要なことは、「現在の問題点を、すべて明らかにするとともに、国民が、総動員で、問題解決に努力する」ということだと考えているが、実際には、「集団的自衛権」や「経済の回復」などが、「政府の主な関心事」となっているようである。

つまり、「臭いものには蓋をする」というような態度が見られるとともに、「海外からの侵略恐怖」を提示することにより「国民の関心を、他の問題に向ける」という考えが存在するようにも感じられるのである。そのために、今回の「美味しんぼ」が問題提起した点については、もう一度、真剣に考え直す必要性があるようにも考えている。