本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.5.26

米国の国防予算と集団的自衛権

現在、日本では、「集団的自衛権」を巡る議論が、活発に行われているが、国民の中には、「なぜ、今、この議論が必要なのか?」という疑問を抱く人も、数多く存在するようである。つまり、「東北の復興」や「国家財政問題」、あるいは、「急速に進展する少子高齢化問題」など、現在の「安倍政権」が取り組むべき課題は、山積している状況であり、「優先順位が違うのではないか?」とも思われるからである。

また、「中国」や「韓国」との「首脳会談」を実現せずに、「仮想敵国との間で、実際の紛争が起きた時の自衛問題」を議論することにも、大きな違和感を覚えざるを得ないようである。つまり、「孫子の兵法」のとおりに、「戦いを避けることが、最も重要な作戦」とも思われるのだが、実際には、反対に、「戦い」に関する認識を、国民の間に、広めようとしているようにも思われるのである。

そのために、「なぜ、今、集団的自衛権なのか?」という理由を考えると、この裏側には、「米国政府による、大幅な軍事費削減」が存在するようである。具体的には、「2013年度予算案」で「約86兆円」の規模だったものが、「2014年度予算案」では「約62兆円」へと、大胆な削減が予定されているのである。そして、このことは、当然のことながら、「日米の安保体制」にも、大きな影響を与えるものと思われるが、具体的には、「日本の国防については、主に、日本人自身が担当せざるを得ない状況」のことであり、確かに、この可能性については、除外できないようにも思われる次第である。

このように、現在の「アメリカ」には、「覇権国家」として「世界の安全を守る」という役割が難しくなっている可能性もあるようだが、この裏側に存在する「最も強力な経済力」についても、現在では、暗雲が立ち込めてきたようにも感じている。つまり、今までは、「デリバティブの大膨張」や「量的緩和政策の推進」などにより、「世界に冠たる金融力」を誇示することができたのだが、現在では、「TARP」という「不良債権救済プログラムの予算」までもが削減されようとしているのである。

具体的には、「2008年のリーマンショック」以降、「市場安定化の資金」として、「TARP」が計上されていたのだが、今回は、「量的緩和の終了宣言」と同時に、この予算が削減されているのである。そのために、今後は、「金融混乱の激化」が予想されるとともに、「大膨張した世界のマネー」が、本格的に動き出すものと考えているが、この「先駆け」となっているのが、現在の「世界的な株高」とも言えるようである。