本間宗究(本間裕)のコラム
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2014.5.26
貴金属の価格操作
「イギリスの金融管理庁(FCA)」は、5月23日に、英金融大手バークレイズの元トレーダーが金価格を不正に操作したことにより、同社に「2603万3500ポンド(約44億6470万円)」の罰金支払いを命じた。また、不正を行った元トレーダー個人にも「9万5600ポンド(約1640万円)」の支払いを命じたが、このことは、以前の「LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作」と同様に、「現在の金融市場が、いかに、歪んだ状態になっているのか?」を、証明したような事件とも言えるようである。
つまり、「金利」のみならず、「為替」や「貴金属」などの市場価格が、「本来、あるべき水準から、乖離した位置に存在している」とも言えるのである。具体的には、「デフォルトの危機」に瀕した「アメリカ」で、依然として、「ゼロ金利政策」が実施され、また、「量的緩和」の名のもとに、「中央銀行が、依然として、大量に国債を買い付けている」という状況などのことである。
そして、この理由としては、「金利が正常な水準にまで戻った時に、どのような事が起きるのか?」を考えれば明らかなようだが、最近、海外では、「4月14日」に発生した「日本国債の商い不成立」が、大きな注目を浴びているようである。つまり、「世界で、最も大きな国債市場」の一つである「日本」で、「新発10年国債の商いが成立しなかった」という「異例の事態」が発生したのだが、この点については、さまざまな憶測や意見が出ている状況となっているのである。
このように、現在では、「世界の金融市場」において、「いろいろな事件」が発生するとともに、「これから、どのような事が起きるのか?」という疑問や危機感が増幅しているようである。別の言葉では、ようやく、現在の「通貨制度」や「金融システム」に関する「問題意識」が、多くの人に芽生えてきたようだが、この時に考えなければいけないことは、「お金とは、本来、どのようなものか?」ということである。
あるいは、「なぜ、現在、大量の資金が、世界に存在するのか?」ということでもあるが、この点については、今までに申し上げた通りに、「1971年のニクソンショック」をキッカケにして、「世界的なマネーの大膨張」が起きたことが、最も大きな原因だったのである。つまり、「コンピューターの中に存在する、単なる数字」が、現代の「通貨」となり、「人々の信用や錯覚」を元にして、歴史的な規模で大膨張したのだが、今回の「金の価格操作」については、この点を見直すための、たいへん重要な事件だったようである。