本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.6.5

ドーマーの定理

最近、いろいろな経済学者から、「ドーマーの定理」について意見を聞く機会があった。つまり、「なぜ、日本の財政が破綻しないのか?」という理由として、この理論が引用されているのだが、具体的には、「プライマリーバランスが均衡している時には、名目GDP成長率が、名目利子率を上回れば、財政赤字は維持可能である」という内容のことである。そして、「この理論を基にして、現在、世界的な金融政策が実施されている可能性」も指摘されたのだが、実際には、「荒唐無稽な意見」とも言えるようである。

つまり、「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」が意味することは、「政府会計において、過去の債務に関わる元利払い以外の支出と、公債発行などを除いた収入との収支」のことであり、現在の日本では、「大幅な赤字の状態」になっているからである。そのために、「政府の目標」として、「2020年までに、プライマリーバランスの黒字化を目指す」という方針が示されているのだが、実際には、「国家財政は、悪化の一途を辿っている状況」とも言えるのである。

しかも、現在では、「異次元の金融緩和」という言葉が使われることにより、「日銀が、大量に国債を購入している」という、典型的な「リフレーション政策」が実施されている状況であり、このことは、「国家の借金を、日銀が肩代わりしている状況」とも言えるのである。つまり、「日銀の債務」を合計すると、「広義の国家債務」は、雪だるま式に増えているわけであり、もはや、「プライマリーバランスの黒字化」については、達成が、きわめて難しい状況とも考えられるのである。

また、この時に、「先進国の異常な超低金利状態」を考慮すると、現在では、「名目利子率」が、「本来の水準から、はるかに低い位置に誘導されている可能性」も存在するのである。つまり、「金利さえ上がらなければ、国家財政は破綻しない」という考え方が主流となっており、その結果として、「量的緩和」という「国債の買い支え」が、世界的に実施されてきたようにも思われるのである。

別の言葉では、「前代未聞の規模で、信用バブルが発生しているのではないか?」ということだが、この点については、今後、「金利の上昇」が起きた時に、全ての事実が明らかになるものと考えている。そして、その時期は、たいへん近くなっているようにも感じているのだが、「投資を実践する者」としては、この状況に対して、大きな危機感を抱くとともに、実物資産への投資を、より一層、お勧めする次第である。