本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.6.9

ECBのマイナス金利

6月5日に「ECBのマイナス金利」が発表されたが、この点には「大きな注意」が必要なようである。つまり、今回は、「民間銀行が、中央銀行に預け入れる法定準備預金」の「超過分」に対して「マイナス0.1%の金利」を付加するというものであり、「個人や企業の預金」に関しては、従来通りに、「金利が付く」という状況でもあるからだ。別の言葉では、「ECB」が、今回、「衝撃的な言葉」を使うことにより、「金融緩和」を強調したかったようにも思われるのだが、実際には、「瓢箪から駒」という言葉のとおりに、「全く正反対の効果」が生まれる可能性もあるものと考えている。

つまり、「世界中の人々」が、「マイナス金利」という言葉に過剰反応する可能性のことだが、具体的には、「1000万円の預金」に対して「1万円のマイナス金利」が徴収された場合には、「誰も、資金を民間銀行に預け入れなくなる」というような事態も想定されるのである。そして、この時には、「タンス預金の増加」や「実物資産への交換」が起きることが予想されるのだが、現時点では、まだ、「個人や企業へのマイナス金利は、具体的には実施されない状況」とも言えるのである。

ただし、この時の注目点としては、「日本人」を始めとして、「世界中の人々」が「実質的なマイナス金利の状態」に気付く可能性とも言えるのである。具体的には、「1000万円の預金」に関して、「2%のインフレ率」が発生すると、「自分の預金は、実質的に、目減りを始めている」ということである。つまり、「1000万円で買えた商品」が、「一年後には、1020万円にまで価格上昇する」という事態のことであり、この時には、「預金」の価値が減少するために、「換物運動」が起きる可能性が存在するのである。

そして、このことが、本当の「インフレ(通貨価値の下落)」を意味するのだが、現在では、いまだに「預金神話」が存在し、多くの人々が、「預金が、一番、安全である」と誤解しているようにも感じられるのである。つまり、「デフレ」という言葉に惑わされ、「自分の預金が、実質的に価値を減少させている」ということに気付かない状態が継続しているようにも思われるのである。

しかし、今回の「マイナス金利」については、この点を、人々に、再認識させる効果があるとともに、「預金に対する信頼感」を減少させる効果も存在するようだが、当面は、「景気回復」や「株価の上昇」などにより、「預金を持っているよりも、株式を持っていた方が得である」と考える人が急増するものと考えている。