本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.6.16

アベノミクスの成長戦略

現在、「アベノミクスの成長戦略」が、徐々に明らかになり始めているが、私自身としては、「某プロ野球球団」と同様に、「監督の顔だけが見えて、選手の顔が見えない状況」のようにも感じている。つまり、「安倍首相」だけが元気であり、いろいろと「アベノミクスの成果」が誇示されるのだが、「日本全体」としては、「ますます、悪化の方向に向かっている可能性のことである。換言すると、「大企業」や「富裕層」などは、「より富める状態」となっているようだが、一方で、多くの「国民」は、「増税」や「物価上昇」などにより、「より厳しい生活」を余儀なくされているのである。

そして、この理由としては、きわめて異常な「金融政策」が指摘できるようだが、具体的には、「ゼロ金利政策」を堅持しながら、「日銀だけが、国債を買い付けている状況」のことである。つまり、「資金の流れ」としては、依然として、「大企業」や「国家」へ資金が移動している状況でありながら、反対に、「一般大衆」は、「給料の増加分」を上回る「税金の増加」などにより、「資産の吸い上げ」が行われているようにも思われるのである。

別の言葉では、多くの国民が「預金神話」に縛られているために、依然として、「株式への資金移動」が起きていないようだが、実際には、「外国人投資家」を中心にして、「割安な日本株」が、大量に買い付けられているのである。その結果として、「日本人が、一所懸命に稼いだ利益」については、多くの部分が「外国の株式保有者」へ流れているのだが、現時点でも、この点を指摘する専門家が、ほとんど存在しないようである。

また、この理由としては、「リーマンショックの再来」などが、大々的に宣伝されることにより、「株式にはリスクがあり、リスクの無い安全資産は、国債や預金である」という考え方が、依然として、主流になっている点が指摘できるようである。しかも、現在では、「国債を保有するリスク」については、ほとんど忘れ去られた可能性があるようだが、この点が、「アベノミクスの成長戦略」における「最大のリスク」とも言えるようである。

具体的には、「株価の上昇」や「景気の好転」が起きると、当然のことながら、「金利の上昇」が予想されるのだが、現在では、「この時に、どのような事が起きるのか?」が、ほとんど考慮されていないのである。そして、「日銀が国債を買い付けるから、国債価格の暴落は起きない」という意見が主流になっているようだが、間もなく、この点に関する「結論」が、見えてくるものと考えており、実際には、「6月から9月」の動きが、たいへん気になる状況とも言えるようである。