本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.7.16

絆のメカニズム

現在、「絆」という言葉が重要視されているが、実際には、曖昧な観念だけに終始しているようである。そのために、「絆とは、一体、どのようなものなのか?」を考えてみたいと思うが、基本的には、「糸の半ば」という文字が表すように、「人と人との関係性」を表していることは、疑いの無い事実とも言えるようである。つまり、「A」という人と「B」という人との「心の方向性」が、「お互いに向き合い、また、思いやりを持った関係性」の時に、「絆」が発生し、また、「信頼関係」が生まれるものと考えている。

しかし、この時に、「A」の心の方向性が「自分」だけに向かった時には、「信頼関係」が崩壊し、「絆」が断ち切られることになるようだが、このことは、現代人が、「自己中心的」になったことに「大きな原因」が存在するようである。ただし、このことは、「ヨコの絆」のことであり、実際には、「対等関係にある人々」の関係性を表しているようだが、この次に考えなければいけないことは、「タテの絆」でもあるようだ。

つまり、「なぜ、支配者と隷従者が生まれるのか?」、あるいは、「慈愛と畏敬とは、一体、どのようなものなのか?」などのことだが、この点については、19世紀の後半、「テンニエス」により書かれた「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」という本が、たいへん参考になるものと考えている。具体的には、「母と子の関係性」などの「タテの絆」に関して、深い考察がなされるとともに、「人と人との結びつき」についても、たいへん興味深い研究が行われているからである。

そのために、今後は、「タテとヨコの絆」を研究することにより、「なぜ、身分や階級が発生したのか?」、あるいは、「なぜ、組織の中での疎外が発生するのか?」などが、深く理解できるものと考えている。つまり、現代人が「苦悩」している、「いじめ」や「うつ病」などに関して、「何らかの回答が出るのではないか?」と思われるが、最初のスタートとしては、「お金の謎」を考えた時と同様に、「無人島の一人」から始めることが重要だと考えている。

つまり、「一人」の時には、「対人関係」に関する苦悩は存在しないのだが、その後、「二人」、「三人」と人数が増えた時に、「信用」が必要とされ、また、「分業体制」も始まることになるのである。しかし、同時に発生することは、「信用」の裏側に存在する「盲目」であり、また、より大きな組織となった時に、「ヨコの絆」から「タテの絆」へと変化するのだが、この時に、きわめて単純な「メカニズム」が働いているようにも思われるのである。