本間宗究(本間裕)のコラム
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2014.8.14
異次元金融緩和の限界点
黒田日銀総裁による「異次元の金融緩和」が始まってから、約1年半が経過したが、「黒田総裁の就任以来、日銀のバランスシートが、どのような変化をしたのか?」を見ると、「恐怖心を抱かざるを得ない状況」とも言えるようである。つまり、「総額」が「約165兆円」から「約273兆円」にまで「約108兆円」も増加し、また、「国債保有残高」は「約125兆円」から「約228兆円」にまで「約103兆円」も増加しているからである。
そして、この時の「資金繰り」を見ると、ほとんどが「当座預金」によって賄われているのだが、具体的には、「約43兆円」から「約151兆円」にまで「約108兆円の増加」となっているのである。つまり、「当座預金」という「民間銀行からの借入金」により、「大量の国債買い付け」が実施されてきたことが理解できるのだが、この結果として、現在では、「約1000兆円もの国債残高」に関して、「2割以上が日銀によって保有されている状況」となっているのである。
また、「日本のGDP」と比較すると、「日銀のバランスシート」は、「50%以上の金額」にまで膨らんでいるのだが、「このような状況は、歴史的に見ても、前代未聞の事態である」とも言えるようである。つまり、今までは、「政府」と「日銀」とが協調することにより、「国債の大量買い」が実施され、その結果として、現在の「超低金利政策」が可能になったようだが、現在の問題点は、「どこまで、このような政策が継続可能なのか?」ということである。
別の言葉では、「日銀が、どのような資金繰りで、どこまで国債を買い続けることができるのか?」ということだが、現在では、この点に関して、「大きな変化」が出始めたようである。具体的には、「6月30日」以降、「当座預金の残高」が、「150兆円強の水準」で「頭打ちの状態」となっているのだが、この時に考えられる理由としては、「民間銀行からの借入が難しくなり始めた可能性」が指摘できるようである。
そして、今後は、「当座預金」に代わり、「紙幣の増刷」が始まる可能性が高まっているが、このような金融政策については、過去に頻繁に行われてきたことであり、実際には、「異次元の金融緩和」と呼べるような代物ではないものと考えている。ただし、これから想定される「金融混乱」については、「異次元の規模」になる可能性が高まっているようだが、最も「異次元な状態」は、現在の「通貨制度」であり、実際には、「影も形もない数字」が、「通貨の根本」になっていることである。