本間宗究(本間裕)のコラム
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2014.8.14
日本の経常収支
8月8日に発表された「日本の上半期経常収支」については、大きな注意が必要だと考えている。つまり、マスコミでは、「原油や天然ガスの輸入増加が原因だった」と言われているのだが、内容を吟味すると、「製造業の空洞化」という「構造的な問題」が存在するようにも思われるからである。別の言葉では、「クローサーの発展段階説」のとおりに、現在の日本が、「成熟した債権国」から「債権取崩国」へと変化した可能性のことだが、今までの推移をみると、この可能性は高くなっているようである。
具体的には、「戦後の焼け野原」から出発した日本人が、その後、歴史的な高度経済成長期を経て、「世界でも有数の資産」を積み上げたのだが、現在では、「その債権を取り崩す段階」に入ったようである。そして、過去の例を見ると、このような国では、「通貨価値の下落」と「金利上昇」に悩まされることが多くなるのだが、幸いにも、現在の日本は、いまだに、「高い通貨価値」と「低金利」を享受できているのである。
そして、この理由としては、「国民が、依然として、日本の現状に気付いていない」という点が指摘できるとともに、「日銀による、異常なまでの国債買い付け」も挙げられるようだが、この点についても、間もなく、限界点が訪れることになるようだ。つまり、「民間銀行からの短期借入金」により「長期国債」を買い付けるという、いわゆる「異次元の金融緩和」が、現在では、ほとんど、限界点に達したものと思われるからである。
また、根本的な要因としては、「製造業の空洞化」や「日本企業の競争力低下」が挙げられるようだが、実際に、現在の日本は、「海外から、多くの製品を輸入し始めている状況」になっているのである。つまり、かつてのような、「原材料を輸入し、加工して、製品として輸出する」というような「単純な成長モデル」から、現在では、「多くの企業が、海外に進出し、他国の企業と熾烈な競争をしている状態」となっており、この時に、「いろいろな分野で、日本企業が海外の競合相手に後れを取る状況」になっているのである。
つまり、「過去の栄光」を記憶している人々にとっては、あまり、考えたくないような状況になっているのだが、この時に必要なことは、「全盛期の日本」ではなく、「焼け野原の日本」を思い出すことでもあるようだ。別の言葉では、「苦労」を重ねた日本人が、その後、「どのような考え、あるいは、どのような態度で、現在の繁栄を築き上げたのか?」ということだが、この点については、間もなく、本格的な「金利の急騰」が起きた時に、「人々の意識」が大きく変化するものと考えている。