本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.9.5

シュリンクフレーション

最近、海外では、「シュリンクフレーション」という新語が使われ始めたようだが、このことは、「シュリンク(収縮)」と「インフレーション(物価上昇)」とを合わせた言葉である。つまり、「名目的な値上げ」が難しいために、「実質的な値上げ」が行われている状況のことだが、実際には、「お菓子」や「日常生活品」などの「内容量の減少」のことである。より具体的には、例えば、「ポッキー」などにおいて、今まで、「100円の定価」で「100グラムの内容量」だったとすると、「内容量が90グラム」にまで減少すると、「実質的な値上げが行われてきた」ということが理解できるのである。

このように、過去数年間は、「シュリンクフレーション」が、いろいろな分野で起きていたようだが、現在では、この点にも、大きな変化が起き始めたようである。つまり、「メーシーズ」や「スマッカーズ」などの食料品メーカーが、「名目的な値上げ」を実施し始めたのだが、この点については、「1970年代の狂乱物価」の時にも、同様の展開が見られたようである。そして、「名目的な値上げ」の後に、「狂乱物価」へと移行したとも言われているのだが、今回については、より大きな注意が必要だと考えている。

つまり、「1970年代」に起きたことは、「1971年のニクソンショック」をキッカケにして、「通貨に対する信頼感」が減少したという状況だったのである。その結果として、いろいろな商品価格が急騰したのだが、結局は、「インフレファイター」と呼ばれた「ポール・ボルカー元FRB長官」の登場により、強烈な「金融引き締め政策」が実行され、「狂乱物価が落ち着いた」という状況でもあったのである。

別の言葉では、「健全な国家財政」を基盤にした「国家への強い信頼感」が存在したために、「長短金利の上昇」が可能だったのだが、今回は、全く、状況が違っているのである。つまり、「QE(量的緩和)」や「異次元の金融緩和」という言葉のとおりに、「先進各国」が「過去に例がないほどの、きわめて異例な超低金利政策」を実施しているのである。そして、このような状況下で、いわゆる「出口戦略」が実施され、実際に、「金利上昇」が起きた時には、「1970年代」とは、全く違った事態も予想されるのである。

具体的には、「国家財政の破綻」により、既存の「金融システム」や「通貨制度」が崩壊する可能性のことだが、この点を理解するためには、現在の通貨制度である「信用本位制」が理解される必要性があるようだ。つまり、我々の「預金」や「国債」などが、実際には、「影も形もない、単なる数字」によって創られているということである。