本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.10.27

日本の金利上昇リスク

10月17日に「日銀」が発表した「金融システムレポート」では、「日本の金利上昇リスク」について、たいへん興味深い報告がなされていた。具体的には、「金利が1%から3%上昇した時に、国債を保有する金融機関に、どれほどの損失が発生するのか?」ということだが、実際には、「1%のパラレルシフト(均等な金利上昇)」が起きた場合で、「約7.6兆円の損失」が予想され、また、「3%のパラレルシフト」の場合には、「約19.3兆円の損失」が発生するとも考えられているのである。

ただし、「日銀」としては、「この程度の金利上昇では、大きな問題は発生しない」と考えているようであり、「日銀の国債買い付け」により、「金融システムの安定は保たれる」とも想定しているようである。別の言葉では、「異次元の金融緩和」は継続可能であり、また、「現在の政策には問題が無い」と考えているようだが、私自身の感想としては、「極めて楽観的な意見」であり、実際には、「机上の空論」のようにも思われた次第である。

つまり、最初の指摘点としては、現在、問題になり始めた「デリバティブ(金融派生商品)」が、ほとんど議論されていないということである。別の言葉では、現在の「超低金利状態」というのは、「金融理論」や「過去の経験則」から考えると、極めて不自然な「力」によってもたらされたものであるとも言えるのである。

具体的には、「金利」は「お金の値段」であり、「お金の需給関係」によって「金利」が決定されるものと考えているが、現在の状態は、「デリバティブ」という「歴史上からも、稀に見るほどの、珍しい金融商品」が、「過去数十年間で、大膨張した結果の産物である」とも想定できるのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」以降、「金本位制」から「信用本位制」へと変化し、「現在の通貨」そのものが、「コンピューターの中に存在する単なる数字」に変わってしまったという事実のことである。

その結果として、現在では、「大量の資金」が存在し、結果として、「史上最低の超低金利状態」が生まれたのだが、このことは、典型的な「バブル状態」とも考えられるようである。そして、今後は、「中央銀行の中央銀行」と言われる「BIS」が、「6月の年次総会」で指摘したように、「市場の反乱」が起きるものと考えているが、この時には、「日銀」の想定する「単純な金利上昇リスク」ではなく、「金融システム」や「通貨制度」の崩壊まで考える必要性があるようだ。つまり、「現代のお金は、絵に描いた餅にすぎない」という事実が、世界的に理解される状況のことである。