本間宗究(本間裕)のコラム

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2014.12.4

2014年を振り返って

2014年を振り返ると、結局は、「国債」と「金」とを巡る、世界的な「金融大戦争」における「最終決戦の年」だったものと感じている。具体的には、「国債を守る陣営」である「日米欧の先進国」にとっては、「国債価格の暴落」を防ぐことができ、また、「貴金属」や「原油」の売り叩きにも、ある程度の成功を収めることができたが、一方で、「量的緩和(QE)の終了」や「オランダの金(ゴールド)返還の動き」などのように、実質的には、「打つ手が無くなりつつある状況」とも言えるのである。

また、今年の特徴として挙げられる点は「世界的な株高」であり、実際には、いろいろな市場で、史上最高値や年初来の高値を更新し続ける強さを見せたが、この理由としては、「資金の溢れ出し」が挙げられる。つまり、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」が年次報告書で指摘したように、「各国の中央銀行が、大量に国債を買い付けた資金」が、回りまわって、「株式」や「土地」へ流れている状況のことである。

しかも、この時に、「通貨の番人」であるはずの「中央銀行」が、いつの間にか、「国債の番人」に変化してしまい、「国家」や「通貨」への信認が揺らぎ始めている。その結果として、ヨーロッパの国々が取り始めた行動は、「リパトリエーション」という「海外に保管されている自国の金を国内に戻す動き」であり、前述のとおりに、「オランダ」は、突如として、「122トンの金」をアメリカから返還してもらったのである。

また、この時に注目すべき点は、大膨張中の「中央銀行のバランスシート」だが、現在の問題点は、「信用乗数」が急低下していることにある。つまり、「マネタリーベース」という「中央銀行が出す資金」は増えているものの、「マネーストック」という「市中に流れる資金」は、ほとんど増えていないのである。その結果として、現在の「信用乗数」は「約3.5倍」という危機的な水準にまで低下しているが、この数字が「1」にまで低下したのが、「1991年のソ連」だった。

つまり、「中央銀行が出す資金」と「市中に流れる資金」が、同じ金額になる状況のことだが、この時には、全ての資金が「紙幣」となってしまうが、このことが、いわゆる「ハイパーインフレ」と呼ばれるものである。そして、現在は、その前の「ギャロッピング・インフレ」の段階だと考えているが、この時の特徴は、「景気の急回復」であり、また、「株高」でもあるが、このことは、「国債を守る陣営」が、刻一刻と「敗戦」に向かっている状況を意味しているのである。