本間宗究(本間裕)のコラム

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2015.1.16

スイスの金融混乱

1月15日に、スイス中央銀行が「為替のペグ外し」を実施した。具体的には、今まで、「1ユーロ=1.2スイスフラン」という上限を設定していたものの、上昇圧力に耐え切れず、突如として、その上限を撤廃したのである。その結果として、スイスフランがユーロに対して、一日に約30%も上昇するという、極めて異例な事態が起きたのだが、このことは、「スイス発の金融地震」と考えられているようだ。

しかし、今までの推移を考えると、今回の混乱は、まだ序の口の段階とも言えるようである。つまり、過去数年間に実施されてきた「世界的な金融コントロール」を考えると、今回の事件が引き金となり、より大きな混乱に移行するものと思われるが、この時に考えなければいけない点が、やはり、「デリバティブ(金融派生商品)」の存在である。具体的には、「約700兆ドル(約8.3京円)」もの残高が存在し、しかも、約2割が「為替デリバティブ」であり、また、約7割が「金利デリバティブ」のことである。

つまり、今までは、この存在が隠されたような状況下で、「量的緩和(QE)」が実施され、結果として、世界的な「超低金利状態」が発生したのだが、このことは、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」までもが警告を発するほどの異常な事態だったのである。そして、今回、「スイス発の金融混乱」が発生したわけだが、このことは、「為替デリバティブ」の崩壊を意味しているようであり、また、次の展開としては、「金利デリバティブ」の崩壊に繋がることも想定されるのである。

具体的には、「BIS」が想定する「市場の反乱」であり、実際には、世界的な「国債価格の暴落」のことだが、この時に予想されることは、「日米欧の中央銀行が、資金繰りに行き詰る状態」である。あるいは、「先進国の政府が、大きな金利負担に耐え切れず、デフォルト(債務不履行)の危機に瀕する」ということだが、この結果として、「先進各国の中央銀行が、一斉に、紙幣の大増刷を実施する状況」も考えられるのである。

そして、このことが、私が想定する「金融大地震」でもあるが、その後に起きることは、未曽有の規模での「大インフレ」だと考えている。つまり、世界中の人々が、「預金」や「現金」、あるいは、「国債」などの「政府の信用を基に成り立っている金融商品」が信用できず、実物資産へ資金移動を始める状況のことだが、このことが、いわゆる「ギャロッピング・インフレ」であり、また、その後の「ハイパーインフレ」でもあるが、現在では、時間的な余裕は、ほとんど無くなったようである。