本間宗究(本間裕)のコラム

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2015.6.15

実質実効為替レート

6月10日の国会答弁で、黒田日銀総裁は、「これ以上の円安は、実質実効為替レートからは考えにくい」とコメントしたそうだが、この言葉の裏側には、「黒田日銀総裁の苦悩」が現れているようであり、また、「国債の買い支え」が、いよいよ、限界点に達した可能性が示唆されているようである。つまり、「エコノミスト」や「評論家」などの「常とう手段」として、「一般大衆に馴染みの無い言葉を使い、論点をぼやかす」という方法が存在するものと考えているが、今回のコメントは、まさに、このような状況だったようにも感じられるのである。

また、確かに、日本の「実質実効為替レート」は、歴史的な安値圏に位置しているが、このことは、必ずしも、「現在が安値だから、これから、反対の動きが始まる」という事を意味してはいないのである。つまり、「1970年代には、より安い水準だった」という事実が見て取れるとともに、根本的な「円安の原因」とも言える「信用乗数の低下」については、全く考慮されていないのである。

別の言葉では、「日銀のバランスシート」を急拡大させ、同時に、「マネタリーベース」も大膨張させたことが、現在の「円安」の、真の原因とも考えられるのだが、この点については、ほとんど、コメントされていないのである。そして、単純に、「円高になってほしい」というような希望的観測が述べられたようだが、このことは、典型的な「口先介入」とも言えるようである。

しかも、「円安を止める為替介入」については、「保有しているドルを売り、円を買う」という方法が存在するが、現在では、「保有している米国債」を売却することができず、実質的に不可能な状況とも考えられるのである。そのために、現在では、このような「口先での介入」しか残されていないようにも思われるが、これからの注目点は、「今回の、黒田総裁のコメントが、どれほどの期間、有効なのか?」ということでもあるようだ。

具体的には、更なる「円安」は、「国債価格の暴落」に繋がる恐れがあるが、現時点では、黒田総裁のコメントにより、一時的な「円高」の状態となっている。しかし、今後、「円安」が、より一層、進行し、「金利の急騰圧力」が高まった時には、スパイラル的な動きも予想されるのである。つまり、「円安」と「金利上昇」が、一挙に、加速するような状況のことだが、この時に、日銀が取れる方法は、「紙幣の大増刷」しか、残されていないようにも考えられるのである。