本間宗究(本間裕)のコラム
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2015.7.6
短期の「利益」と長期の「痛み」
6月28日に開かれた「BISの年次総会」のレポートを読むと、今まで以上の「悲壮感」が漂っているようにも感じられたが、この理由としては、やはり、「時間的な余裕」が無くなっている点が指摘できるようである。あるいは、すでに、本格的な「金融大混乱」が始まった点を憂慮している可能性も存在するが、今回、「カルアナ総裁」のコメントで、最も印象深かったことが、「短期の利益」と「長期の痛み」という言葉だった。
具体的には、現在の金融政策は、「短期の利益」だけが目標となっており、結果として、「長期間の痛み」を経験する可能性が高くなっているということであり、このことを象徴する出来事が、今回の「マイナス金利」でもあったようだ。つまり、現在の「超低金利状態」については、決して、「ニューノーマル」ではないというものだが、このことは、今後、「金利水準」が、大きく変化することを示唆しているようである。
別の言葉では、過去一年間の変化として、「原油価格の下落」と「ドル高」、そして、「世界的な超低金利状態」を指摘しているのだが、この時に、「現在の金利水準は、新たな均衡状態ではない」という点を、強く主張しているのである。そして、短期的には、世界経済や金融システムは、比較的、好調に見えるものの、将来の姿を考えると、決して、安心できるような状況ではないと考えているようである。
具体的には、すでに始まった「ギリシャの金融混乱」が、今後、他の国に波及していく可能性のことだが、この点について、「カルアナ総裁」は、「以前から、先送りの問題点を指摘していた」という状況だったのである。つまり、「量的緩和」という「国債の買い支え」が実施されなかったら、「世界の金融システムは、とっくに崩壊していたはずだ」と述べ、「先送りされた時間」の有効活用を提言していたのだが、実際には、全く逆の事態が発生したようである。
つまり、世界の「国債残高」、すなわち「国家債務」は、増え続ける一方であり、決して、根本的な解決が図られなかったのだが、歴史を尋ねると、このような状況が行き着く先は、典型的な「マネタイゼーション」とも言えるようである。具体的には、「紙幣の増刷」により、「全ての借金を棒引きにする方法」のことだが、この試金石となるのが、今回の「ギリシャ」とも考えられるようである。別の言葉では、現在の「瀬戸際外交」、あるいは、「EU]との「チキンレース」が、今後、どのような展開になるのかということだが、実際には、「EU」自体も、ギリシャと同様の危機に見舞われることになるようだ。