本間宗究(本間裕)のコラム

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2015.8.5

法的安定性

7月15日に実施された「安保法案の強行採決」については、将来的に、「日本が変わるための、キッカケとなった事件だった」と言われる可能性があり、この時に、「60日ルール」が適用される「9月の半ば」までの「国会審議」が、大きな注目点だと考えていたが、今回は、早速、きわめて重要な事件が発生したようである。具体的には、安倍首相の補佐官である「礒崎陽輔氏」による、「法的安定性では、国は守れない」という発言のことだが、この言葉は、実際のところ、「近代国家」そのものを否定するような意見とも言えるようである。

つまり、歴史を尋ねると、近代国家の成立にも、大きな流れが存在するが、この時に、「非理法権天」という言葉のとおりに、徐々に、合理的な思考へと移行してきた事が見て取れるようである。具体的には、「近代国家」の前が「絶対王政」と呼ばれる体制であり、また、その前には、いわゆる「封建制度」の社会が形成されていた。そして、この過程で、人々の結びつきが強くなっていき、最後には、「法律」で守られた「近代国家」が誕生したのである。別の言葉では、「封建制度」の時代には、非合理的な「主従関係」や「血縁社会」が、おもな「絆」でもあったようだが、その後、「絶対王政」の時代には、「度量衡の統一」が実施されたことにより、より高度の経済社会が誕生することとなったのである。

しかし、この過程で起きることは、「組織」や「社会」に隷従する人々が増えることであり、また、現在の「近代国家」においては、「法令順守」が絶対条件となっているのである。つまり、社会が、巨大になればなるほど、「隷従者」が増え、その結果として、「権力」が強くなるのだが、問題は、往々にして、「権力の暴走」が起きることである。そのために、「近代国家」や「西ローマ帝国」などの巨大国家においては、「法的安定性」が、きわめて重要な役割を果たしていたものと思われるのである。

このように、今回の事件や、安倍首相の強行採決などを考えると、すでに、「権力の暴走」が始まっている可能性もあるようだが、この点を、「日銀の法律やルール」で考えると、すでに、いろいろな変更が行われているのも、間違いのない事実とも言えるようである。具体的には、「日銀による国債の保有額」などのことだが、これらのことを総合して考えると、現在の世の中は、すでに、「近代国家」としての条件が満たされなくなっている可能性もあるようだ。特に、「金融システム」や「通貨制度」においては、以前から、「資本主義」と呼べるような状況ではなく、反対に、「国家の統制」が効きすぎた、一種の、「社会主義」とも言えるような状態とも考えられるのである。