本間宗究(本間裕)のコラム

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2015.8.5

イエレン議長の思惑

イエレン議長の就任当初から、彼女のコメントには違和感を覚えていたが、それは、あまりにも「当たり前のコメント」しか述べないという点である。あるいは、「FRBの業績や歴代議長の功績」などを強調するだけであり、それまでの議長とは違い、「金融問題について、ほとんど、コメントしない状況」でもあった。そのために、「なぜ、このようなコメントを出し続けるのか?」という疑問を抱いていたのだが、現在では、「これが、イエレン議長の戦術だったのではないか?」と考えている。

つまり、「グリーンスパン氏」の場合には、「バブル崩壊を防ぐために、新たなバブルを形成した」と述べているように、未曽有の規模で「デリバティブ・バブル」が発生したことが理解できるのである。また、その後を引き継いだ「バーナンキ氏」の場合には、「デリバティブ・バブル」の崩壊を防ぐために、「量的緩和(QE)」という名の「国債の買い支え」を行ったのだが、「イエレン氏」の場合には、「口先介入」を実施する以外に、方法が残されていないようにも思われるのである。

別の言葉では、「最後の手段」である「紙幣の大増刷」を避けるために、「金利上昇」や「出口戦略」を匂わせながら、「時間稼ぎ」を行っている可能性のことである。そして、現在は、世界中の人々が、「イエレン氏の術中」に嵌っているようにも感じているが、結局のところは、「両刃の剣」の状況とも考えられるようである。つまり、「イエレン議長の言葉」に対する信頼感が失われた時に、一挙に、「世の中が激変する可能性」が存在するようにも感じられるのである。

つまり、「信用を築くためには、長い時間が必要である」、しかし、「信用の崩壊は、ほぼ瞬間的に訪れる」という格言のとおりに、現在の「巨大なマネー経済」を支えるためには、もはや、「口先介入」だけでは、不可能な状況とも考えられるのである。そのために、今後も、「イエレン議長のコメント」には、大きな注目を払っていきたいと考えているが、基本的に、彼女の述べることは、「実体経済」に関するコメントだけであり、ほとんど、「マネー経済」には言及していないようにも感じている。

別の言葉では、「一面だけを述べて、全体を隠そうとする方法」とも言えるようだが、彼女ほどの「知識」と「経験」があれば、今後、どのような事態が起きるのかは、簡単に予想が付くものと考えている。しかし、問題は、「タテマエ」を言わなければいけない「立場」であり、この点は、彼女の「良心」との「せめぎ合い」でもあるようだ。