本間宗究(本間裕)のコラム
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2015.9.8
金利上昇の波紋
8月末現在で、「日銀のバランスシート」は、総額が「約361兆円」にまで拡大しており、また、「当座預金残高」は「約231兆円」にまで増えている。そして、「国債の保有額」は、「約306兆円」という、前代未聞の金額にまで増えているが、この時に考えなければいけない点は、「金利上昇の波紋」であり、具体的には、「短期借り、長期貸し」の恐ろしさだと考えている。
つまり、今後、世界的な「金利上昇」が起きた時に、「日銀のバランスシートが、どのように変化するのか?」ということであり、また、その時に、「日本のみならず、世界の金融システムは、どのような状態に陥るのか?」という点である。具体的には、現在、「当座預金の超過分」に対して、「0.1%金利」を払っているが、今後、「金利の上昇」が起きた場合には、金利支払い分が急増することも予想されるのである。
しかも、この時に考えなければいけない点は、「短期資金を借りて、長期国債へ投資している状況」のことだが、実際には、「恐怖心を感じざるを得ない状態」とも言えるようである。つまり、今後、短期金利が「0.5%」にまで上昇しただけで、「金利の支払額は、1兆円を超える状態」となるが、一方で、「保有国債から得られる金利は、固定されているために、変化しない状況」だからである。
別の言葉では、「若干の金利上昇で、日銀の資金繰りが、きわめて危機的な状況に陥る」ことが予想されるのだが、同時に考えなければいけない点は、「その時に、継続して、国債を買い続けられるのか?」ということである。つまり、「国債を売却すれば、国家財政が破綻状態に陥る可能性」が存在するために、現在の「日銀」は、「どのような手段を用いようとも、国債を買い続けなければいけない運命」となっているのである。
そして、このことが、数年前から、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS]が指摘し続けてきたことだが、具体的には、「各国の中央銀行は、最後に、どのような手段でも用いる」、しかし、「最後に市場の反乱が起き、その後は、後追いで、急速な金利の上昇に追い込まれる」という可能性である。つまり、「1991年のソ連」で起きたことと、似たような状況のことだが、不思議な点は、これほどまでの状況になりながら、誰も、この点を指摘しないことである。しかし、実際には、「ケインズ」が主張する「通貨の堕落過程では、100万人に一人も気づかないうちに事態が進行する」という展開となっているようにも感じられるのである。