本間宗究(本間裕)のコラム

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2015.9.16

社債金利の上昇

9月12日付けの日経新聞によると、「今年の初めから、社債金利の急騰が始まっている」とのことだが、このことは、典型的な「クラウディング・アウト」の状態を意味しているようである。つまり、「国家の資金需要」が強くなりすぎて、「民間の金融機関」や「民間企業」などに、「資金が回りにくい状況」が発生しているようだが、今後は、この動きが、「国債価格」にまで反映されるものと考えている。つまり、「国債の金利上昇(価格の下落)」であり、また、「ゼロ金利政策の終焉」のことだが、この点については、今までの推移を考えると、実に、恐ろしい結論が見えてくるようである。

より詳しく申し上げると、今まで、「日銀」は、「異次元の金融緩和」という名の下に、「民間からの資金吸い上げ」を実施しており、実際には、「量的緩和」と名付けられた、「当座預金の増加」が実施されていたのである。つまり、「約230兆円」もの資金を、「0.1%の金利」を支払うことにより、「民間の金融機関」から借り入れているが、この結果として、「民間部門で、資金不足が起き始めている可能性」が存在するのである。

別の言葉では、「国民の預金」に関して、「日銀が、間接的に、国債に振り替えている状況」のことだが、実際には、「民間の金融機関に預けられた預金」などが、国民の知らないうちに、いつの間にか、国債に投資されていたのである。しかも、この時に、「日銀トレード」という言葉までもが生まれ、このことは、「日銀が買うから、国債の価格が下がるはずがない」というような「バブル的な発想」が、「いつの間にか、日本人の間に浸透した状況」を意味しているのである。

つまり、典型的な「国債バブルの発生」のことだが、この事実を裏付けるように、現在では、「誰も、国債価格の下落を危惧しない状況」が起きているようである。別の言葉では、「バブルは、弾けた時に、初めて、その存在に気付く」というような状態となっているようだが、今回の「国債バブル」については、「未曽有の規模で、大きなリスクが存在する」ものと考えている。

具体的には、「1991年のソ連崩壊」の時と、似たような状況となっている可能性のことだが、当時の「ソ連」では、「国債価格の暴落」とともに、「大インフレ」が発生した。そして、「経済の教科書」のとおりに、「年金生活者」や「サラリーマン」などが、ほとんど、資産価値を失うこととなったが、現在の日本では、「約4000万人もの年金生活者」が存在し、「今後、どのような事になるのか?」が危ぶまれる状況とも言えるのである。