本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2015.11.5

身ノ無キ財産

日本では、ほとんど報道されなかったが、9月30日に、財務省が、「戦後の我が国財政の変遷と今後の課題」という題名の「44ページのレポート」を発表した。そして、その中で、「終戦直後のハイパーインフレ」などが、詳しく述べられているが、私自身の感想としては、「いよいよ、財務省が、本格的なインフレ政策に移行するのではないか?」ということだった。あるいは、一種の「証拠作り」のようにも思われたが、この点については、間もなく、事実が判明するものと考えている。

そして、今回のレポートで、特に興味深かったのが、「昭和20年11月5日」に発表された「財政再建計画大綱要目」だったが、この中で、特に印象に残ったのが、「今日、我ガ国民ノ財産総額ハ、現在幾何ニ達スルヤ遽ニ推断ヲ下シ得ザルモ、概ネ四、五千億円ト推定セラルル処、其ノ中千五百億円乃至二千億円ハ、国債ノ累積等ニ基ク、謂ハバ身ノ無キ財産ト考フベキモノナルベシ」という文章だった。

つまり、当時の「日本の国富」は、おおむね「4千億円から5千億円」と想定されており、その中の「1500億円から2000億円」は、「国債の累積等に基づく、中身の無い財産である」と考えられていたのである。別の言葉では、「国債は、実質的に不良債権であり、国富とは認められない」という考えを持っていたようであり、その結果として、次のような政策が実行されたのである。

具体的には、「謂ハバ身ノ無キ財産トシテ国民ノ懐ニ在ル資金ヲ、大規模ニ吸収シ、物ト金トノ均衡ヲ回復スルノ要アリト認メラル」という説明のとおりに、「新円切り替え」や「預金封鎖」などの強硬手段が実施されたのである。しかし、この時に、「インフレにより、財政均衡が達成された」とも述べられており、実際には、「債務残高の対GDP比率」に関して、「昭和19年の204%」が、その後、「昭和25年の14%」にまで、急速に減少しているのである。

別の言葉では、「名目上のGDP」において、「昭和19年の745億円」が、その後、「昭和25年の3兆9460億円」にまで大膨張したために、結果として、「債務比率の急減」が起きたのである。そして、このような状況こそが、私の想定する「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」への移行でもあるが、すでに、このようなレポートが発表されたという事実は、時間的な余裕が無くなっている証拠であり、また、間もなく、本格的な「金融大地震」が起こる可能性を示唆しているようである。