本間宗究(本間裕)のコラム

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2015.11.25

非鉄価格の急落

現在、「非鉄」や「貴金属」の価格が急落しており、この理由としては、「悪化する中国経済」や「ドル高」などが挙げられているようである。つまり、「中国の需要が減少しているために、価格が下落している」、あるいは、「貴金属の価格は、ドルと連動している」というような意見が、大勢を占めているようだが、この点には、大きな注意が必要であり、私自身としては、今後、全く正反対の動きになるものと考えている。そして、この理由としては、「2008年のリーマンショック」などの時に、「株価が大暴落して、世界は大恐慌に陥る」というような意見と、似たような論理だとも思われるからである。

具体的には、過去数年間、あるいは、現在でも、頻繁に、「大恐慌の再来」が叫ばれ続けているが、実際のところは、全く根拠のない意見であり、現実は、まったく反対の動きとなっているのである。つまり、いまだに定説が存在しない「1929年の大恐慌」の原因として「アメリカの間違った金融政策」が指摘できるが、実際には、「金本位制の下で、アメリカに大量に流入した金(ゴールド)の処理を誤った状況」が考えられるのである。

より具体的には、「1923年」に発生した「ドイツのハイパーインフレ」に怯えて、「金融引き締め」を実施し、その結果として、「世界的な民間銀行の連鎖倒産」が発生したわけだが、一方で、「国家の債務状態」については、現在と違い、きわめて健全な状態でもあったのである。つまり、当時は、「国家を救って、民間銀行を潰した」という状況だったが、現在では、全く正反対であり、実際には、「大銀行が救済されたものの、一方で、国家財政が、きわめて危機的な状況」となっているのである。

しかも、現在では、大量の資金が、世界に存在するために、将来的には、この資金が、「非鉄」や「貴金属」、あるいは、「原油」などの市場に、殺到するものと思われるために、決して、現在の「商品価格の急落」については、悲観的にならないことをお勧めする次第である。つまり、これからの「金融大混乱」を想定すると、現在では、「日本人だけが、全く備えの無い状態」とも考えられるのである。

このように、「国家財政の破綻」については、過去に頻繁に起こったことであり、この時には、必ず、「ハイパーインフレ」が伴ったが、現在の日本では、この点が、ほとんど無視されているのである。そして、「国債」や「預金」などが、最も重要視されているようだが、実際には、これから想定される「本当のインフレ」の時に、「貴金属などを持たずして、日本人は、どのようにして生き延びるのだろうか?」と憂慮せざるを得ないのである。