本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2016.2.5

急減する「FRBの自己資本」

「1月21日」に発表された「米国FRBのバランスシート」において、「自己資本の総額が急速に減少している事実」が、海外で、投資家の注目を集めているようだ。具体的には、「約395億ドル(約4.6兆円)」にまで、一挙に、「約176億ドル(約2兆円)」も残高が減っているが、その結果として、現在の「自己資本比率」は、「約395億ドル(約4.6兆円)÷約4.45兆ドル(約525兆円)≒0.89%」というように、きわめて危機的な状況に陥っているのである。

そして、この理由として考えられることは、「資産」の部分において、「何らかの損失」が発生した可能性でもあるようだが、今後、更なる減少が継続すると、「FRBが、債務超過に陥る事態」も想定されるようである。つまり、実質的な「破綻」のことだが、ご存じのとおりに、「民間の金融機関」については、「BIS規制」が存在し、「国際業務を行うためには、一定の、自己資本比率を満たす必要性がある」と決められているのである。

しかし、「中央銀行」の場合には、この規制が当てはまらないだけではなく、現在、あまりにも無謀な「バランスシートの大膨張」が、世界的に発生しているのである。具体的には、「日本」において、「日銀のバランスシートの総額が、約400兆円にまで大膨張した」というように、「GDPの約8割」の規模にまで、異常な大膨張を、急速に実施しているのである。

そして、この時に思い出されるのが、「1998年のLTCM事件」でもあるが、実際には、「ノーベル経済学賞」を受賞した「二人のエコノミスト」が、自分たちの理論を実証するために、投資会社を設立し、実際に、運用を始めたのだった。しかし、結果としては、ご存じのとおりに、「あっという間に、破たんした」という状況だったが、この原因として挙げられたのが、過剰な「レバレッジ(テコの効果)」だったのである。

具体的には、「自己資本に対して、何十倍、何百倍の規模にまで、投資金額を増やした」という状況のことだが、この時に発生したことは、「資産が、わずかに目減りしただけで、自己資本が、吹っ飛んでしまった」という展開だった。そして、現在では、世界各国の中央銀行が、同様の実験を繰り返しているようだが、確かに、「国家」や「中央銀行」には、「紙幣の増刷によって生き永らえる」という「最後の手段」が存在するために、決して、破産することはないものと思われるが、今後、どれほどの「副作用」が発生するのかは、人類史上、未知の状況とも言えるようである。