本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.4.4

保護主義とグローバル化

今回の「アメリカの大統領選挙」を見ると、多くの候補者が「TPP」に反対しており、このことは、「実体経済」の面において、「保護貿易主義的な傾向」が、アメリカで強まっているようにも感じられるが、この点については、より深い考察が必要だと感じている。つまり、「保護貿易とグローバル化」の問題を考える場合に、「実体経済」と「マネー経済」を分けて考える必要性のことだが、実際には、「米(こめ)や自動車」などのような商品と、「デリバティブ」を中心にした「金融商品」との区別のことである。

そして、この点に関して、「1980年代」から「現在」までの「アメリカの政策」を振り返ると、基本的に、「金融商品」に関しては、「グローバル化」が促進されたものの、一方で、「実体経済」に関する商品に関しては、「自動車」などのように、「自国の競争力」が減少した商品に対しては、「保護貿易」の傾向が強まったものと考えている。ただし、「牛肉」や「米」などのように、「自国が競争力を持っている商品」については、積極的に「保護貿易」に反対する立場を表明しているようだが、現時点で注目すべき点は、「金融商品に関する競争力」でもあるようだ。

具体的には、「1995年頃」に、「双子の赤字」や「三つ子の赤字」に悩まされていた「アメリカ」が、「なぜ、現在、復活することができたのか?」を考えると、基本的には、「デリバティブ」という「金融商品」を、世界的に普及させた点が指摘できるようである。別の言葉では、「デリバティブを大膨張させることにより、メガバンクが復活しただけではなく、アメリカの財政状態も救われた」という事実のことだが、結局のところは、このことが、「グローバル化」が意味することだったようである。

しかし、現在では、この言葉が、ほとんど聞かれなくなり、反対に、「ローカル化」という言葉までもが生まれているようだが、このことが意味することは、「アメリカが、金融商品に関する競争力を失った可能性」でもあるようだ。つまり、「2008年のリーマンショック」までは、「デリバティブの大膨張」が発生していたのだが、その後は、いわゆる「量的緩和」が実施されたために、「デリバティブ」は、実質的に、価値を失い始めた可能性が存在するのである。

その結果として、現在の「アメリカ」は、「金融面での保護主義」に動き始めた可能性が存在するようだが、この点については、昨年末の「利上げ」が、大きな意味を持つとともに、今後の展開が気に掛かる状況とも言えるようである。