本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.5.2

量的緩和と金融引き締め

いまだに、「日本」では、「量的緩和の実態」が理解されていないようにも感じているが、「2001年」から始まったことは、かつての「準備預金」が、「当座預金」に名称変更されたことである。つまり、かつては、「準備預金の増加」が「金融引き締め」を意味していたのだが、「2001年以降」は、「当座預金の増加が、金融緩和である」という理解や解釈をされるようになったのである。

そして、このことが、「日本の失われた20年」が発生した、最も大きな原因の一つだと考えているが、具体的には、「名目GDP」が、「1995年以来、約500兆円で、横這いの状態」となっているのである。しかし、一方で、「マネーストック」である「M2」については、現在、「約923兆円」にまで増加しており、本来ならば、「過剰流動性相場」が発生していても不思議ではない状況とも言えるのである。

このように、現在の「日銀の量的緩和」については、実際のところ、「金融引き締め」であり、実際には、「約280兆円もの資金」が、「日銀」により吸い上げられた状況となっているのである。しかも、この時に、「ゼロ金利」や「マイナス金利」が実施されたために、より一層、「市中に、資金が出回らない状態」となっているのだが、このことは、「名ばかりの量的緩和」、あるいは、「実質上の金融引き締め」が実施されているために、「日本の景気が冷え込んでいる状況」とも考えられるのである。

しかし、これから予想されることは、「日銀が吸い上げた資金」が、「一挙に、市場に流れ出す状況」でもあるが、実際には、「約280兆円の当座預金」に関して、「日銀が維持できなくなる状況」のことである。具体的には、「国債価格の暴落」が始まると、全面的な「金利上昇」が起き、その結果として、「民間金融機関は、一斉に、当座預金の取り崩し」を始めるものと考えているが、残念ながら、現在の日本では、この点を憂慮する人が、ほとんど存在しない状況となっているのである。

つまり、かつての「銀行不倒神話」と同様に、「日銀は、決して、破綻することが無い」と信じられているようだが、実際には、「日に日に、日銀の資金繰りが悪化している状況」とも考えられるのである。具体的には、「マイナス金利」により、「保有している国債」に関して、大きな損失が出るとともに、依然として、「当座預金」に対しても、多くの部分に「0.1%の金利」を払っているからだが、この結果として、現在では、前述の「当座預金の取り崩し」が、間近に迫っている段階のようにも感じられるのである。