本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.5.2

ダメージの蓄積

今回の「熊本の大震災」では、「ダメージの蓄積」という言葉が使われたが、このことは、「度重なる地震により、徐々に、建物にダメージが蓄積されていき、最後に崩壊した状態」のことである。つまり、最初の「震度7」の地震で倒れなかった建物が、その後の地震により、崩壊したのだが、この点については、現在の「世界的な金融システム」と似たような状況とも考えられるようである。

別の言葉では、「市井の経済学者」と言われた「高橋亀吉氏」が強調されていた「限界点」の話に繋がるようにも感じているが、実際には、「100キロの荷物を載せることができる椅子に、徐々に、荷物を載せていく状況」のことである。つまり、最初に、「30キロの荷物」を載せても、その椅子はびくともしないのだが、その後、徐々に、荷物を載せていき、「総量が100キロを超えた時点で、椅子が、あっという間に崩壊する状況」のことである。

そして、この事実を、「高橋亀吉氏」は、経済学に、頻繁に応用されていたが、実際には、「どれほど無理な状態が継続可能なのか?」に関する考察であり、現在の状況に当てはめると、「世界の金融システムが、どこまで維持可能なのか?」ということである。つまり、「2007年のサブプライム問題」や「2008年のリーマンショック」、あるいは、その後の「量的緩和」の時に言われたことが、「世界経済が大恐慌の状態に陥る可能性」だったが、実際に起きたことは、「ゼロ金利」のみならず、「マイナス金利」だったのである。

つまり、「中央銀行の無謀な国債買い付け」により、世界の「国債価格」が、未曽有の規模で「バブルの状態」となったものと考えているが、現在では、この点が、全く無視されているのである。しかも、この時に、「中央銀行は、今後も、更なる国債の買い付けが可能である」と、固く信じ込まれているようだが、実際には、間もなく、限界点に達するものと思われるのである。

このように、現在では、「2000年のITバブル」や「1990年の日本株バブル」とは、比較にならない規模で、世界的な「国債バブル」が発生しているようだが、「バブル」には、「弾けた時に、始めて、その存在に気付く」という性質が存在する。そして、気付いた時には、すでに「手遅れの状況」となることも予想されるのだが、今までの度重なる「ダメージの蓄積」を考慮すると、現在では、時間的な余裕がなくなるとともに、今後は、未曽有の規模で、「インフレ(通貨価値の下落)」が発生するものと考えている。