本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.9.2

マネタリーベースと株価

最近、いろいろなところで、「マネタリーベースが増えても、株価が上がらない」というような意見が聞かれるが、この点には、大きな誤解が存在するようだ。つまり、「マネタリーベース」とは、「中央銀行が、民間銀行に出す資金」のことであり、「信用創造」における「基になる資金」でもあるからだ。そして、この資金を使い、民間金融機関は、さらなる「信用創造」を行うのだが、この時に重要な指数は、「マネーストック」であり、現在では、主に「M2」が重要視されているようだ。

そして、これらの数字を具体的に把握しながら、現状理解をすることが、投資の基本だと考えているが、実際には、「7月末」で、「マネタリーベースが約400兆円」、そして、「M2が約941兆円」という数字となっている。別の言葉では、「日銀」が出した「お金」が、「民間金融機関」により、「約2.3倍」にまで膨らんでいるのだが、この時に重要な点は、「民間金融機関」と「企業や個人」との関係性とも言えるようだ。

つまり、「日銀」は、基本的に、「民間金融機関」としか取引をしないために、「マネタリーベースが、どれほど増えようとも、企業や個人には影響が存在しない状況」となっているのである。別の言葉では、「マネーストックが増え、市中に資金が出回ると、株価の上昇につながり、景気が良くなる状況」が想定されるのだが、現在では、ほとんどの資金が、「日銀の当座預金」に吸い上げられ、結果として、「市中に、資金が出回らない状態」となっているのである。

このように、現時点で、最も重要なことは、「約500兆円のGDP」に対して、「約941兆円のM2」が存在するために、本来は、「資金が株式市場に回り、過剰流動性相場の発生も想定される」という点である。しかし、実際には、「約300兆円の資金」が、「当座預金」の形で「日銀」に還流した結果として、市中に、資金が出回わらず、また、この資金で、日銀が国債を大量に買った結果として、未曽有の規模での「国債バブル」が発生している状況とも言えるのである。

そのために、今後、重要な点は、「国債バブルの崩壊」と「金利の急騰」により、「日銀が吸い上げた約300兆円の当座預金」が、一挙に、市中に還流する状況だと考えている。つまり、大量の資金が、株式市場などに出回り、結果として、未曽有の規模での「過剰流動性相場」が発生する可能性のことだが、今後は、いち早く、この点に気付いた人が、本当の勝ち組になるようだ。