本間宗究(本間裕)のコラム
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2016.9.16
黒田日銀総裁の演説
9月5日の「黒田日銀総裁の演説」を読んで感じたことは、以前の「イエレンFRB議長のコメント」と同様に、ほとんど「ホンネ」が語られていない可能性でもあった。つまり、「タテマエ」だけを語ることにより、「問題の先送り」を目論んでいるようにも感じられたが、特に気になったのが、「金利」だけに注目し、「市中に出回る資金量」が、ほとんど問題視されていなかった点である。
具体的には、「金利の操作」だけで「金融システムの安定」が継続可能であると主張したかったようだが、実際には、「マイナス金利の副作用」により、今後は、「短期金利の低下」も難しくなっているものと思われるのである。また、「長期金利」については、今まで、「日銀トレード」という「日銀が更なる高値で買ってくれるから、安心して、高値を買う動き」が、すでに終了した状況とも考えられるために、やはり、これ以上の、金利低下が難しくなっているようにも感じられるのである。
つまり、今後は、「短期」のみならず、「中期」や「長期」の金利も、世界的に上昇を始めるものと思われるが、この時に、最も危惧すべき点は、「金融庁」が指摘し始めた「短期借り、中長期貸し」のポジションでもあるようだ。具体的には、「短期資金」を借りて、「長期国債」などに投資する方法のことだが、この投資の問題点は、「短期金利が上昇すると、一挙に、損失が発生する可能性」とも言えるのである。
具体的には、現在の「日銀」のように、「0.1%」の金利で短期資金を借り、「マイナス金利の10年国債」に投資すると、今後、短期金利が急上昇した時に、損失額が、大幅に膨らむ可能性が存在するのである。つまり、短期金利が「2%」に上昇しても、すでに投資した「10年国債」については、「満期までマイナス金利が確定している状況」でもあるからだ。そのために、今後の注目点は、短期金利が上昇した時に、「日銀」を始めとして、「国債」を保有する全ての「金融機関」に、大きな損失が発生する可能性だが、前述の演説においては、この点が、ほとんど言及されなかったのである。
つまり、現在は、「口先介入による時間稼ぎ」しかできなくなった段階とも思われるが、この点については、早ければ9月中にも結論が出るものと考えている。そして、今後の注目点は、黒田総裁が指摘した「適合性の予想形成」、すなわち、「これまで物価や金利が上がらなかったのだから、今後も上がらないだろう」という「人々の認識」が変化する可能性であり、実際には、人々がパニック状態に陥る可能性も存在するようである。