本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.9.26

金融庁の思惑

9月15日に「金融庁」が発表した「平成27年事務年度金融レポート」では、いろいろな点が指摘されているが、特に注目すべきことは、「短期借り、中長期貸しのリスク」であり、また、「現預金から実物資産へ資金移動を目論んでいる思惑」とも言えるようだ。具体的には、「日本全体で、短期資金を調達して、中長期の国債などに投資する状況」となっている点に警告を発しながら、「低金利の現預金から、値上がり利益が期待できる株式や土地、あるいは、貴金属などの実物資産」へ資金の移動を誘導したがっているようにも思われたが、この理由としては、「日本の家計金融資産の伸び」が、アメリカやイギリスに比べて、きわめて低い状況だった点も指摘されているのである。

具体的には、「アメリカ」の場合には「過去20年間で約3.11倍」、「イギリス」では「同期間に約2.27倍」となっているのに対し、「日本」では、「同期間に約1.47倍」にしか増えていないのである。そして、この理由としては、「資産の52%が現預金で保有されている状況」が指摘されているが、このことは、「日本人が現預金を安全資産だと考え、株式や貴金属、あるいは、土地などの実物資産に、資金を移動させなかった」ということが主な要因として挙げられているのである。

しかし、この事実を、反対の観点から考えると、「国民が現預金を保有していたために、日銀による異次元の金融緩和が可能だった」とも言えるのだが、実際には、「約300兆円もの当座預金」を、民間の金融機関から借り入れて、大量の国債を、きわめて異常な価格にまで買い上げたからである。つまり、「日本のマイナス金利」については、「大量の現預金」と「日銀による国債の大量買い」が、最も大きな原因だったものと考えているが、現在では、この点に関して、「金融庁」が、大きな政策の転換を図ろうとしているようにも感じられるのである。

 つまり、「資産価格の上昇」により、「金融資産の全体量を増やし、結果として、景気の改善を図ろうとしている状況」とも思われるが、この時の問題点は、「金利が上昇すると、日銀のみならず、国家までもが破たん状態に陥る可能性」である。その結果として、大量の紙幣が増刷されるものと思われるが、実際には、「ケインズ」の言葉のとおりに、「通貨の堕落は、100万人に一人も気づかないうちに進行する」という状況となっているのである。別の言葉では、今後、誰もが予想もしなかったほどの「バブル相場」が発生するものと考えているが、実際には、「名目上の価格上昇」にすぎず、実質的には、「通貨の価値」が失われる状況が予想されるのである。