本間宗究(本間裕)のコラム
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2016.10.5
日銀の政策転換
9月21日に実施された「日銀の政策変更」には、大きな注意が必要だと感じているが、その理由としては、「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」の内容に、ある種の「秘密」が隠されているものと感じられるからである。つまり、「今後、新たな局面に移行するための、巧妙な抜け道が隠されている可能性」のことだが、実際には、昨年の「9月30日」に、「財務省」が作成した「戦後の我が国財政の変遷と今後の課題」というレポートのとおりに、金融政策が転換された可能性があるようにも思われるのである。
より具体的には、「インフレにより、国家債務を減少させる方法」のことだが、実際の方法としては、「名目上のGDPを増加させながら、国家債務比率を相対的に減少させる方法」のことである。つまり、「昭和19年度」においては、「名目GDPが約745億円」に対して、「債務残高が、2倍以上の約1520億円」という状況だったが、「昭和25年度」では、「名目GDPが約3.9兆円」にまで増えたのに対し、「債務残高は約5540億円」という数字に留まったのである。
その結果として、「GDPに対する債務残高の比率」は、「昭和19年度の204%」が、「昭和25年度の14%」にまで減少したのだが、このことは、「現預金を、実質的な紙切れ状態にすることにより、表面上の国家債務を大幅に減少させた」という状況だったのである。そして、今回も、同様の手段が講じられるようにも思われるが、実際には、「マネタリーベースの増加」に関して、今までのような「当座預金残高の積み上げ」ではなく、今後は、「紙幣の大増刷」によって行われるものと想定されるのである。
つまり、黒田総裁が約束した「2%以上のインフレ」というのは、結果として、「3%や4%、あるいは、それ以上の数字」になるものと思われるが、問題は、「この時に、国債市場がマヒ状態に陥る可能性」とも考えられるのである。別の言葉では、「国債の発行が難しくなり、日本全体が、紙幣の増発に頼らざるを得なくなる状況」のことだが、今回の「日銀の政策変更」については、この点が危惧される段階に入ったものと感じられるのである。
しかも、今回は、「日本」だけではなく、「世界の先進国」の全てが、似たような状態となっており、また、「ドイツ銀行」などを中心にして、「デリバティブ(金融派生商品)」の問題も明らかになりつつあるのだが、実際には、今までのような「時間稼ぎ」が難しくなっている状況とも言えるようである。