本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.11.14

国民の不満

今回の「米国大統領選挙」は、「6月23日のBREXIT(イギリスのEU離脱)」に続いた「国民の不満」の表れではないかと考えているが、この点については、実際のところ、「デリバティブの残高」が、大きな影響を与えたようにも感じている。つまり、現在、世界最大の「デリバティブ保有国」が「イギリス」であり、また、次が「アメリカ」となっているが、実は、この点が、「国民の不満」を大きく増幅させた要因だったようにも思われるのである。

つまり、「お金の性質」から判断できることは、「増えたお金は、そのお金を創った主体に帰属する」ということだが、実際には、「2000年当時、約8000兆円の規模だったデリバティブ(金融派生商品)」は、その後、「2007年から2008年にかけて、約8京円にまで大膨張した」という状況だったのである。そして、増えた「資金」は、ほとんどが、「一部のメガバンク」と「政府」に帰属したものと想定されるが、その結果として発生した事態が、「国民の窮乏」だったのである。

具体的には、「世界全体の資金総額」は増えたものの、「個人の給料や保有資産」が、ほとんど変化しなかったために、「相対的な資産価値の急減」に見舞われたものと想定されるのである。別の言葉では、「価値が激減した通貨」を稼ぐために、「死に物狂いで働かざるを得ない状況」に追いつめられたようにも感じているが、この結果として発生した事態が、現在の「過労死」や「過労自殺」だった可能性も存在するのである。

このように、「信用創造」という「何もない空中から、お金を創り出す状況」こそが、現在の「貧富格差」を生み出した根源のようにも感じているが、この時に考えなければいけないことは、「国家」と「国民」との関係性でもあるようだ。具体的には、「目に見える税金」のみならず、「目に見えない税金」までもが課されているために、「国民の生活」が、きわめて厳しくなっている状況のことである。

つまり、「異次元の金融緩和」や「量的緩和」が意味することは、「中央銀行が、国民の預金を使い、国債を異常な価格にまで買い上げる」ということであり、このことは、典型的な「リフレーション(通貨膨張)政策」という、「目に見えないインフレ税」が課されていた状況だったのである。しかし、残念ながら、ほとんどのマスコミは、この点を無視した「大本営的な発表」に終始したために、現在では、「国民」が「堪忍袋の緒を切らし始めた状況」となっているようにも思われるのである。