本間宗究(本間裕)のコラム

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2016.12.5

干支から見る2017年

「2017年」は「丁酉(ひのと とり)」という暦になるが、「丁」が意味することは「陰陽の交錯」であり、また、「酉」は「醸」に繋がり、「新たな変化が醸し出される状況」を表している。また、「末尾に7の付く年」は、必ず「丁」の暦となるが、過去の経験則からは、「年の前半高、また、後半のショック安」が考えられるようだ。具体的には、「2007年」の場合には、「7月」から始まった「サブプライム問題」、「1997年」においては、「8月」に「タイから始まった世界的な信用収縮」、そして、「1987年」には「10月のブラックマンデー」などのことだが、この点については、より深い理解が必要な状況とも言えるようである。

つまり、「2007年のサブプライム問題」までは、「世界のマネーが大膨張を継続していた時期」であり、そのために、「1987年のブラックマンデー」や「1997年の信用収縮」については、「マネーバブルの形成過程に発生した金融混乱だった」という事実である。しかし、一方で、「2007年のサブプライム問題」や「2008年のリーマンショック」については、「マネーの大膨張が限界点に達したことを、世界中に知らせる出来事だった」ものと想定されるのである。

別の言葉では、いわゆる「量的緩和(QE)」が、「金融のメルトダウン(炉心溶融)」、あるいは、「インフレの大津波」を意味していたものと考えているが、実際には、「水面下で、深く進行していた」という状況であり、その結果として、ほとんどの人が、この点に気付いていない状況とも感じられるのである。しかし、今後は、「国債価格の暴落(金利は上昇)」とともに、本当の「インフレ」が、はっきりと形を表し始めるものと考えているが、この点については、「日本の信用乗数」が、典型的な指標とも言えるようである。

つまり、「マネーストック(約970兆円)÷マネタリーベース(約420兆円)=信用乗数(約2.3倍)」のことだが、現在では、「1990年前後にピークを付けた約13倍」、そして、「黒田日銀総裁が就任した時の約6倍」を、大きく下回り、「下限の1倍」にまで近づいた状況となっているのである。別の言葉では、「1991年のソ連崩壊時」と同様に、「国債価格の暴落とともに、ほぼ瞬間的に、1倍にまで急減する事態」のことだが、このことは、「金融機関が機能不全状態となり、紙幣が大増刷される状況」を意味している。そして、この点に関して、「2016年のマイナス金利」が、後世において、「インフレが始まる前の、典型的な引き潮状態だった」といわれる可能性が高まっているようにも感じられるのである。