本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.3.4

物価水準の財政理論

現在、「異次元の財政政策」という言葉が使われ始めるとともに、この政策を後押しする理論として、「物価水準の財政理論(FTPL)」という、20年程前に議論された理論が、再度、脚光を浴び始めている。具体的には、「ノーベル経済学者のクリストファー・シムズ氏」が提唱した理論であり、実際には、「物価変動は、財政政策によるものである」という考え方のことである。

より具体的には、「財政政策により、インフレを起こさずに、国家の財政問題を片付けることができる」と理解されているようだが、私自身としては、「あまりにも国民を愚弄した議論ではないか?」とも感じられた次第である。つまり、政府が取れる政策としては、「財政政策」と「金融政策」の二種類が存在するが、現在は、「財政政策」が行き詰まった結果として、「異次元の金融緩和」という、「中央銀行のバランスシート拡大による、国債の大量買い付け」が実施されている状況とも言えるからである。

別の言葉では、「物価水準の財政理論」そのものが、20年ほど前に破たんしたものと考えているが、より注目すべき点は、「クリストファー・シムズ氏」が「計量経済学の専門家である」という事実である。つまり、私自身としては、「1980年代初頭に、計量経済学そのものが、有効性を失ったのではないか?」と考えており、実際の記憶として、「この前後に、計量経済学者が、大量の首切りに遭遇した事実」が思い出されるのである。

そのために、「なぜ、今回、過去の理論が、再度、脚光を浴びたのか?」が、たいへん奇妙に思われるのだが、実際には、典型的な「大本営的発表」とも考えられるようである。つまり、「国民の目をそらすために、過去の経済理論が、再度、利用された可能性」のことだが、この点については、間もなく、真偽の程が証明されるものと考えており、具体的には、「どのようにして、財政政策が実施されるのか?」、また、「どのようにして財源を捻出するのか?」という点である。

ただし、これから実際に予想される現象としては、「戦後の日本」と同様に、「名目GDPの急増」とも考えられるために、表面上は、「政府の財政政策が功を奏し、経済が好転した」と考えられる可能性も存在するようである。つまり、古典的な「ギャロッピング・インフレ」を利用して、「株価の上昇」が目論まれる可能性のことだが、今後の注目点は、「どれほどのスピードで、金利やインフレ率が上昇するのか?」ということであり、この速度により、今回の政策の有効性が判断できるものと考えている。