本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.3.4

異次元の財政政策

「2月27日の日経新聞」に「異次元の金融政策から異次元の財政政策へ」という記事が掲載されたが、この点には、大きな注意が必要だと考えている。つまり、現在では、「日銀の黒田総裁」が、今まで強引に推進してきた「国債の大量買い付け」が、実質上、難しくなってきた事実を物語るとともに、昨年末に、「黒田総裁」が言及した「新たな局面」に、すでに入っている可能性が存在するからである。より具体的には、「年間で約80兆円もの国債買い付け」を公言してきた「日銀」が、今後、大きな「政策変更」に迫られる状況が予想されるのである。

その結果として、今後は、「財政政策」に重点が移るのではなく、実際には、古典的な「インフレ政策」が実施されるものと考えているが、このことは、「70年ほど前の日本」で発生した事態が再来する可能性である。つまり、当時は、「大膨張した戦時国債」を減らすために、「新円切り替え」や「財産税」などの政策が実施されたのだが、「2015年9月」に発行された「財務省のレポート」によると、「最も効果があったのは、ハイパーインフレによる、実質的な国債残高の削減だった」とも述べられているのである。

そのために、今回も、同様の展開が予想されるようだが、実際には、このことが、「異次元の財政政策」と呼ばれるものの「正体」とも言えるようだ。つまり、「ギャロピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」に移行する過程においては、当初、「名目上のGDPが、大幅に増加する状況」が予想されるのである。その結果として、表面上は、「政府の財政政策により、景気が好転した」と理解される可能性も存在するのだが、問題は、その後に発生する「ハイパーインフレ」である。

より具体的には、「10%台までのインフレや金利上昇」の時には、「ローソクが燃え尽きる前のような状態」が発生し、「企業収益の劇的な好転」と「株価の急騰」が予想されるのだが、その後の「ハイパーインフレ」の段階では、「約6か月間、企業行動そのものが、大変厳しくなる状況」が想定されるのである。そして、このことが、過去100年間、30ヶ国以上で発生した「ハイパーインフレ」の典型的な現象であり、現在の世界情勢は、この方向に向かって、一直線に進んでいる状況のようにも感じられるのである。

つまり、「1991年のソ連」と同様に、「国債価格の暴落」が始まったとたんに、「紙幣の大増刷」が実施される可能性のことであり、今後は、この点に注意しながら、「財務省」や「日銀」の発表などに、大きな注目をする必要性があるものと考えている。