本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.5.6

米国のフロンティア・スピリット

19世紀のアメリカでは、いわゆる「フロンティア・スピリット(開拓者精神)」が高揚し、結果として、「困難に打ち勝って、西部の土地を開拓した」と言われている。また、この動きが、西端に達した1890年頃に、「フロンティアの消滅」という状況が発生し、「これ以上、開拓する土地が無くなった」とも考えられたようである。そして、私自身も、以前は、「この前後に、アメリカ人の開拓者精神が消滅したのではないか?」と考えていたが、実際には、全く違った状況でもあったようだ。

具体的には、「フロンティア(辺境)」は消滅したものの、「フロンティア精神」は、継続していた可能性のことだが、実際には、目的や形を変えたようにも思われるのである。つまり、1890年頃までは、「土地の開拓」が主な目的だったものの、その後は、「開拓した土地の発展」へと、目的が変化したようにも感じられるのである。別の言葉では、「実体経済の成長」であり、この点については、「二つの世界大戦を経て、米国が世界の覇権国家になった」という状況からも明らかなようである。

このように、アメリカ人の開拓者精神は、時間の経過とともに、形を変えているようにも思われるが、興味深い点は、「20世紀のアメリカ」が、「実体経済」のみならず、「マネー経済」においても、フロンティア精神を発揮した状況だったようにも感じられるのである。つまり、「土地の開拓」が限界点に達した時に、「実体経済」において、世界進出を果たし、その後、「実体経済」が低迷状態に陥った時には、「マネー経済」で世界の市場を席巻したものと考えられるのである。

ただし、現在では、「100年に一度の金融大混乱」といわれた「2008年のリーマンショック」以降、世界的なマネーの大膨張がストップした状況であり、実際には、本当の意味での「フロンティアの消滅」が発生した状態のようにも感じられるのである。つまり、西洋的な価値観である「唯物論」が、完全に行き詰まりを見せた状態のようにも思われるが、この時に注目すべき点は、やはり、「文明法則史学」であり、実際には、「西暦2000年前後に、西洋の時代から東洋の時代へ移行する」という考え方のことである。

そして、この時には、「西暦2000年を中心にして、数十年間の混乱期が存在する」とも言われているが、今までの推移をみると、まさに、この理論のとおりの展開となっており、今後は、「1600年前の西ローマ時代」と同様に、「財政赤字」と「インフレ」により、「唯物論から唯心論」への辺境開拓が行われる段階とも言えるようである。