本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.7.12

屈辱の100年と大分岐

「7月1日」の「英国エコノミスト誌」に「習近平氏の『中国の夢』、千年間のGDPで精査」という記事が掲載された。具体的には、「中国の習近平国家主席には歴史認識に誤りがあり、この点を、三人の中国とイギリスの歴史学者が、資料を基にして検証した」という内容だが、「習近平氏」は「屈辱の100年」という言葉を使い、「1839年のアヘン戦争から、1949年の中国共産党の設立までの間、中国は、屈辱の約100年間を経験した」と考えるとともに、「2049年」の「新中国建国100周年」までに「世界の覇権国家となる目標を立てている」とも報道されているのである。

しかし、実際には、「2017年4月」に「英国のオックスフォード大学」で発表された「中国、ヨーロッパ、そして、大分岐:西暦980年から1850年における歴史的な国家会計の研究」という論文で、「英オックスフォード大学のスティーブン・ブロードベリー氏」、「中国・北京大学の管漢暉氏」、そして、「北京にある清華大学の李稻葵氏」の三氏が、「中国は、数百年前から欧州に後れを取っていた」という内容の意見を述べているのである。

そして、この点については、「Great Divergence(グレートダイバージェンス 大分岐)」という、「1990年前後に、サミュエル・ハンティントンという学者が造った言葉」が参考にされているが、この研究では、「中国が、19世紀どころか、14世紀には、欧州主要国に追い抜かれていた」という事実が示されているのである。別の言葉では、習氏が考える「中国の夢」には根拠がないために、「実現性」や「魅力性」に疑問が呈せられているのである。

ただし、この点については、今から半世紀ほど前に「村山節氏」が発見した「文明法則史学」により、より詳しい理解が可能だと考えているが、具体的には、「今後、東洋の時代が始まるものの、世界の覇権国家という概念そのものが時代遅れになる可能性」である。つまり、「西洋の時代(西暦1200年から2000年)」における「価値基準」は、「唯物論」や「市場経済」だったが、今後の「東洋の時代(西暦2000年から2800年)」においては、「唯心論」や「共同体」への変化が予想されるのである。

別の言葉では、今後、「経済学」を始めとした「社会科学」が、急速に進化することにより、「人々の、精神面での意識向上」が予想されるために、全く新たな社会が形成されるものと考えている。