本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.8.1

川下デフレとシュリンクフレーション

マスコミでは、いまだに「デフレからの脱却」が議論されており、この点については、「黒田日銀総裁も、頭を悩ましている状況」とも理解されているようだが、「企業物価指数」や「消費者物価指数」を吟味すると、別の姿が浮かび上がってくるようだ。具体的には、「2017年7月の速報」において、「企業物価指数」の内容を見ると、「素材原料」については「+20.7%」、「中間財」が「+4.6%」、そして、「最終財」が「+0.1%」という状況になっているからだ。

つまり、「川上」では、すでに「インフレ」の状態となっているものの、「川下」では、まだ「デフレ」の減少が継続しているわけだが、この理由としては、以前に申し上げた「シュリンクフレーション」が、大きな影響を与えているようだ。具体的には、過去に「100円の価格」で「100グラムの内容」だったものが、最近では、「価格が据え置かれながらも、内容量が減少している状況」となっているのである。

しかし、実際の統計数字では、この点が考慮されていない可能性が存在するとともに、このような「実質上のインフレ」については、「日本」のみならず、「海外」でも、注目を浴び始めている状況となっている。つまり、「消費者が、以前と同様の商品内容を買うために、今までよりも多額のお金を払う必要性」のことであり、このことは、すでに「インフレ」が始まっている状況を表しているものと想定されるのである。

つまり、現在では、「川上に降った雨が、時間をかけて、川下に向かっている状況」とも言えるようだが、この点については、いわゆる「クリーピング・インフレ(忍び寄るインフレ)」とも、大きな関係性が存在するようだ。あるいは、「金融大地震の後に襲うインフレの大津波」のことでもあるが、現在は、きわめて強大な「潜在的インフレ圧力」が、水面下に溜まった状態とも想定されるのである。

そして、今後は、「国債価格の暴落」とともに、「この圧力が、一挙に表面化する状況」も想定されるようだが、実際には、「自然災害の大津波」と同様に、「気付いた時には、手おくれの状態」となるものと考えている。あるいは、現在のような「世界的な株高」が、すでに、「ギャロッピング・インフレ」の状態を表しているようにも思われるが、やはり、「ケインズ」が指摘したとおりに、「通貨の堕落がもたらすハイパーインフレは、百万人に一人も気づかないうちに進行する」という状況であり、今回も、まさに、同様の展開となっているようだ。