本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.8.14

高額紙幣の廃止

「8月1日」の日経新聞で、「日本は、一万円札を廃止せよ」という意見が紹介されている。具体的には、「ハーバード大学のロゴフ教授」の主張として、「高額紙幣を廃止すれば、脱税やマネーロンダリングなどの犯罪が防げるだけではなく、次なる経済危機に備えることが可能だ」、しかも、現在、「中央銀行」が陥っている「ゼロ金利の制約」という「これ以上、金利を下げることができない状態」に対しても有効であるとの理解である。

より具体的には、「現金を廃止して、マネーを電子化すれば、4%程度のマイナス金利を課すことが可能である」、また、「その先駆者となれるのは、あらゆる金融政策を試みてきた日本である」ともコメントされているのである。そして、「ヨーロッパ」などの国々で、現在、このような動きが始まっているのも、間違いのない事実のようだが、この点については、「お金の性質」や「過去の歴史」を無視した、典型的な「机上の空論」、あるいは、今後の「金融大混乱」を引き起こす「キッカケの出来事」とも言えるようである。

つまり、「預金の使用や引き出し」に関する「禁止」や「制限」は、「日本の戦後」に発生した「預金封鎖」や「新円切り替え」と、実質上、同じ効果を持っているようにも思われるからである。別の言葉では、「通貨」や「政府」に対する「信頼感」を喪失させる効果が存在し、間もなく、多くの人々が、「預金」や「現金」などを、「実物資産」に交換する「換物運動」へと繋がる状況も想定されるのである。

しかも、この時に、「中国」や「ロシア」、あるいは、「インド」などの国々が、「上海協力機構(SCO)」を強化しながら、「金本位制」への復帰を目論んだ場合に、世界的な「パワーバランス」が、一挙に崩れる可能性も存在するようだ。つまり、「文明法則史学」が教える「西洋の時代から、東洋の時代への移行」が、急速に進展する可能性のことだが、この時の注目点は、やはり、「西洋諸国の国債価格」でもあるようだ。

具体的には、「1991年のソ連」と同様に、「国債価格の暴落」により、「紙幣の大増刷」、しかも、「高額紙幣の発行」が、一挙に発生した事態のことだが、この点を熟知している「ロシア」や「中国」にとって、現在の「高額紙幣廃止論」は、「自分たちの陣営に、塩が送られるような議論」とも捉えられているようにも感じている。つまり、現在の「フィアットマネー(政府の信用を基にした通貨)」に対する信頼感を失わせ、「金」を中心にした「貴金属」の価格を、急上昇させる効果があるからだが、この点に関する結論が出るのは、たいへん近い時期でもあるようだ。