本間宗究(本間裕)のコラム

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2017.9.13

人民元建ての原油先物取引

「9月10日付の日経新聞」によると、「中国政府は、年内にも、上海エネルギー取引所で、人民元建ての原油先物取引を開始する予定」であり、しかも、この時に、「人民元が金と交換できる可能性」も報じられている。そして、かりに、この取引が実現すると、世界全体の「力関係(パワーバランス)」において、劇的な変化が生じる可能性が存在するようだ。つまり、「世界の覇権国家」に関して、現在の「米国」から、将来の「中国」への移行を象徴する出来事のようにも思われるが、基本的に、「原油や穀物、あるいは、貴金属などが、どの通貨で取引されるのか?」が「覇権国家」を見るうえで、最も重要な要因だと考えている。

具体的には、「1950年前後」に発生したことが、それまでの「大英帝国」から「アメリカ合衆国」への「覇権の移行」だったが、この前後に、さまざまな商品が、「ポンド建て」から「ドル建て」へと変化したことも見て取れるのである。このように、現在、「中国」が目論んでいることは、強大な「軍事力」と「経済力」を背景にして、「人民元の流通」を増やしながら、「世界における存在感」を増やすことであり、この時に、「上海協力機構(SCO)」を強化しながら、「金本位制」への復帰とも推測されている。

そして、前述の「金に交換可能な人民元建ての原油先物取引」については、まさに、この目論見を実行するための「最も有効な手段の一つ」とも考えられるようである。また、この時に、「サウジアラビア」を「アメリカ」から疎遠にして、「自分たちの陣営」に取り込もうとする動きも報道されているが、実際には、「アラムコ」の上場に関して、「中国が、大量の株式を購入する計画」とも噂されているのである。そして、この推測が正しく、「サウジアラビア」が「中国」と接近するような事態になると、まさに、「中国が世界を制覇する」というような状況が考えられるようだが、私自身としては、「そうは、簡単に問屋が卸さないのではないか?」とも感じている。

つまり、「文明法則史学」が教える「東西文明の転換」と、私自身が考案した「五次元経済学の基礎理論」を合わせて考えると、今後は、「世界の覇権国家」という考え方自体が、時代錯誤になる可能性が存在するものと思われるからである。別の言葉では、「西洋の時代」においては、「唯物論」や「マネー」などが「基本的な価値観」だったが、今後、予想される「東洋の時代」においては、「高貴な精神性」、あるいは、「唯心論」が「中心的な価値観」になるものと思われるのである。具体的には、「人々の興味と関心」が、大きく変化し、今までとは、まったく違った社会が形成される可能性を想定している。