本間宗究(本間裕)のコラム
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2017.10.24
カイザンとカイゼン
今回の「神戸製鋼所によるデータ改ざん問題」については、「驚き」や「嘆き」、あるいは、「呆れ」など、さまざまな感想を抱かされたが、特に注目した点は、「40年も前から、不正が行われていた」という事実だった。つまり、「1980年前後から、日本の堕落が始まっていた可能性」を考慮せざるを得なかったわけだが、実際には、当時に発生した「重厚長大から軽薄短小へ」という変化により、「神戸製鋼所の収益構造が悪化した可能性」も存在したようである。
その結果として、「データの改ざん」により「見せかけの利益」を出そうとしたものと推測されるが、当然のことながら、「トヨタ」を始めとした「数多くの日本企業」は、英語にもなった「カイゼン(改善、kaizen)」という「血の滲むような努力」を継続していたことも見て取れるのである。つまり、どのような企業も、熾烈な国際競争を生き抜くためには、自社の「商品」や「サービス」などを、不断に改善する必要性が存在するわけだが、「神戸製鋼所」の場合には、「カイゼン」よりも「カイザン」という「安易な方法」に頼ったようにも感じられるのである。
そして、このことが、私の想定する「日本の堕落」とも言えるようだが、実際には、「日本人」が持ち続けてきた「職人魂」が失われ始め、「お金儲け」や「企業内での出世」などが「人生の目的」となった可能性である。その結果として、「日本の国際競争力」は、徐々に低下を続けているわけだが、より大きな問題は、「このような状況下で、日本の国家財政が、急速に悪化している事態」とも考えられるのである。
つまり、「国際競争力」が改善されるためには、「実体経済」において、「より良い商品」、「より良いサービスや経営」などが必要とされるわけだが、現在の「アベノミクス」においては、「マネー経済の改ざん」とでも呼ぶべき「リフレーション政策」が、大々的に実施され続けてきたのである。別の言葉では、「末期がん患者にモルヒネを打つような政策」といわれる「中央銀行のバランスシート大膨張」のことだが、この結果として発生した現象は、「見せかけの株高」とも言えるようである。
別の言葉では、過去の歴史で頻繁に発生した「ギャロッピング・インフレ」が、すでに発生し、その結果として、現在の「世界的な株高」が起きているものと考えている。つまり、「通貨の堕落」が発生しているものと考えているが、現時点でも、この点を指摘する人は、ほとんどいない状況とも言えるようである。