本間宗究(本間裕)のコラム
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2018.3.25
虎の尾を踏んだトランプ大統領
「3月22日」に、「トランプ米大統領」は「中国が米国の知的財産権を侵害している」という理由のもとに「最大600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に関税を課す」ことを目指す「大統領覚書」に署名したが、この点については、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「実体経済」と「マネー経済」を区別する必要性のことだが、今回の関税については、現在、「実体経済」に対する悪影響だけが議論され、より重要なポイントである「マネー経済が、今後、どのような展開を見せるのか?」が抜け落ちているようにも感じられるのである。
つまり、「1980年代」以降の「アメリカの実体経済」については、すでに、「国際的な競争力」が失われ、その結果として、保護貿易主義的な傾向が強まっていたのである。その結果として、「マネー経済」、特に、「デリバティブ」などの金融商品を、世界的に普及させることにより、「米国の競争力」が保たれてきたが、今回の「大統領署名」については、「今までの努力」を台無しにするとともに、「マネー経済においても、米国の競争力を失わせる可能性」が存在するようにも感じられるのである。
つまり、「実体経済」を守ろうとして、より巨大な規模の「マネー経済」を破裂させる可能性のことだが、実際には、「世界的な国債価格の暴落」を引き起こすことにより、「先進各国の財政問題」を表面化させる可能性のことである。別の言葉では、「2008年前後のGFC(グローバル金融危機)」以降、「先進各国は、ありとあらゆる手段を使い、デリバティブ・バブルの崩壊を隠そうとしてきた状況」だったようだが、今回、「トランプ大統領」は、虎の尾を踏んだことにより、本格的な「大インフレ」を引き起こす可能性が高くなったようにも感じられるのである。
具体的には、今回の「株価の急落」により、世界中の人々に対して、「どの資産が、最も安全なのか?」を考えさせる効果があったようだが、実際には、「国債」や「預金」などの「政府の信用を基にした資産」か、それとも、「貴金属」や「株式」、あるいは、「土地」などの「実物資産」か、という選択のことである。そして、この時に考えなければいけない点は、「民間の利益や税収」を基にして、「国債の発行」が可能になっている状況のことだが、現在では、「国債の方が、株式や貴金属よりも安全な資産である」という認識を持っている投資家が、数多く存在するようにも感じている。つまり、さまざまな点において、「本末転倒した状態」が発生しているようだが、今回の「大統領署名」については、この点を、広く認識させる効果が存在したものと考えている。