本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.3.25

ホーキング噴射と特異点

3月14日に「ホーキング博士」が逝去されたが、「博士の人生」を振り返ると、「人間の尊厳は、必ずしも肉体だけにあるのではなく、精神や知識にも存在する」という事実を、再認識させられたようにも感じている。また、「博士の業績」を振り返ると、「ホーキング噴射」と「特異点」の理論は、現在の「経済学」にも応用可能なようにも思われたが、具体的には、「ブラックホールは非常に強い重力を持ち、あらゆる物をのみ込むものの、周囲にのみ込む物がない状態では、逆にエネルギーを放出して蒸発する」という「仮説」のことである。

つまり、「過去数十年に発生したマネーの大膨張」が「ブラックホール」に相当し、「人間の欲望」を飲み込んだ状況のことであり、また、「2008年前後のGFC(グローバル金融危機)」が「特異点」という「大膨張の限界」だった可能性のことである。そして、その後は、「エネルギーを放出して蒸発する過程」に入ったようにも感じているが、実際には、「世界各国は、どのような手段を使っても許される」というような認識のもとに、「非伝統的な金融政策」が、世界的に実施された状況のことである。

より具体的には、「中央銀行のバランスシート」を大膨張させ、「国債の大量買い付け」が行われた状況のことだが、ご存知のとおりに、現在では、「出口戦略」が実施され始めるとともに、「日銀の債務超過」までもが危惧されている状況となっているのである。つまり、「金融システムのメルトダウン」が進展し、その結果として、「通貨価値の蒸発」が始まった段階のようにも感じているが、残念ながら、現在でも、この点が理解されず、依然として、多くの人々が「古典的な経済理論」にしがみついている状況とも言えるようである。

つまり、今後、「世界的な国債価格の暴落」が始まった時に、「先進各国が、紙幣の大増刷を始める可能性」が高まっている状況のことだが、今回の「トランプ大統領の関税問題」については、「虎の尾を踏んだ状況」とも言えるようである。具体的には、今回の事件をキッカケにして、「世界的な株価の下落」ではなく、「世界的な国債価格の下落」が発生する可能性が高まっているようにも思われるのである。

そして、このことが、私自身が受け取った「ホーキング博士からのメッセージ」だったようにも感じているが、この点については、今後の数か月間で、真偽の程が明らかになるものと考えている。つまり、「時間的な余裕」が無くなり、本格的な「大インフレ」が、世界的に始まる可能性のことである。