本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.5.2

日本の財政健全化

5月2日の日経新聞で、「財政黒字化が5年先送り」という記事が掲載された。具体的には、「国と地方を合わせた基礎的財政収支を黒字化する目標時期を25年度とする検討に入った」というものだが、この点については、「まだ、このような記事が掲載されているのか」という「憤り」の感情が湧き出してきたのが実情だった。つまり、「座して死を待つ日本人」という言葉のとおりに、現在の日本人は、いまだに、「財政の健全化が、既存の方法で、政府によって実施される可能性」を信じ込んでいるからだ。

具体的には、「税収を増やし、歳出を減らす方法」のことだが、実際には、この記事で説明されているように、「日本の国家債務残高が増え続けている状況」であり、また、「日銀による国債の大量買い付けにより、超低金利状態が維持されている状況」とも言えるのである。しかも、現在では、「ステルス・テーパリング」という言葉のとおりに、「日銀による国債の買い付け金額が、急激に減少している状況」であり、実際には、「年初からの4ヶ月間で約14兆円、年間換算で約42兆円」という金額となっているのである。

そのために、間もなく、本格的な「円安」と「金利上昇」が、日本を襲うものと推測されるが、実際には、「いまだに、個人資金が預金に留まっている状況」となっている。具体的には、「2017年末」の段階で、「個人金融資産が約1880兆円」、そして、この内の「約961兆円」が「現金や預金で保有されている状況」のことである。つまり、多くの日本人は、「国家や通貨に対する信用」を強く持っており、その結果として、「預金を持っていれば安全だ」という考えに、依然として、囚われているのである。

そして、この点については、「戦争直後の日本人」に、想いを至らせざるを得ないが、実際には、当時も、同じような状況だったことが見て取れるのである。つまり、「日本は神の国であり、戦争に負けることは有り得ない」という誤った信念を抱き、結果として、保有していた「預金」や「保険」などが、実質的に、「紙切れの状態」となったのである。そのために、今回は、同じ過ちを繰り返さないことを望んでいたが、現在では、すでに、難しくなった状況とも言えるようである。

具体的には、今回も、「日本の財政健全化」が、「紙幣の大増刷」という、典型的な「インフレ政策」により計られる可能性が、きわめて高くなっており、また、時間的な余裕も、ほとんどなくなった状態のようにも感じられるのだが、実際には、「2018年の後半」にも、このことが始まる可能性を憂慮している次第である。