本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2018.6.3

ポピュリズムの悪循環

最近、海外では、「ポピュリズムの悪循環」という言葉が使われ始めたが、このことは、「不満を抱えた有権者」と「無責任な公約」が悪い結果を生み、それにより、「有権者がさらに不満を募らせ、公約がもっと無責任なものになり、より、一層ひどい結果をもたらす」というものである。そして、このことは、現在の「イタリアの混乱」を象徴する状況として使われているようだが、実際には、「日本」や「アメリカ」でも、同様の状況となっているものと思われる。

つまり、「国民」が望むものは「好景気」や「所得増」であり、結果として、「選挙」では、現在の「アベノミクスを標榜する自民党」のように、国民の希望を実現する可能性が高い政党が選択されているのである。しかし、実際には、前述のとおりに、「無責任な公約」となり、国民が不満を募らせている状況とも言えるようだが、この点に関して、最も注目すべき事実は、「国家債務の大膨張」や「日銀のバランスシート急拡大」により、「景気の拡大」が実現されてきたことである。

別の言葉では、「将来の国民が背負う借金」を当てにして、「ポピュリズム(大衆迎合主義)」が成り立っていたわけだが、現在では、世界的に、この方法が行き詰まってきたのである。つまり、「世界的な金利上昇」、そして、「中南米諸国のハイパーインフレ」は、すでに、「ポピュリズムの限界点」が露見し始めた状況とも言えるが、今後は、「体力の弱い国から順番に、今までの付けを払う状況」も想定されるようである。

具体的には、「金利上昇」と「通貨価値の下落」のことだが、この結果として発生することは、「今まで先送りされてきた国家の借金が、一挙に、国民に降りかかる事態」である。つまり、「インフレ税」により、「国家の債務が、急速に消滅する状況」でもあるが、この点については、「戦後の日本人」が、すでに経験したことであり、また、「間もなく、我々に襲い掛かってくる恐怖」とも考えられるようである。

そのために、現時点で必要なことは、「これから想定される金融大混乱期を、どのようにして生き延びるのか?」を考えることでもあるが、この点に関して、「日本」と「海外」とでは、大きな違いが存在するようだ。具体的には、海外で、すでに、「自己防衛の動き」が始まっていながらも、日本では、きわめて「呑気な状態」となっている状況のことだが、この点については、実際のところ、「金融面における一億総玉砕」となる可能性が高まっているようにも感じている。