本間宗究(本間裕)のコラム

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2018.6.12

G7の内部分裂

6月に開催された「G7」と、その直前の「主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議」では、「G7の内部分裂」が世界に露呈されたようだ。具体的には、トランプ大統領の暴走により、「G6対アメリカ」という構図が誕生した可能性だが、このことは、たいへん近い将来に、大きな変動を、世界の金融市場にもたらすものと考えている。つまり、典型的な「角を矯めて牛を殺す状況」のことだが、実際には、「貿易赤字」という「小さな欠点」を無理に直そうとして、「金融システム」という「経済の根本」、あるいは、「社会の全体」をダメにする可能性である。

別の言葉では、「自分の選挙」を有利に運ぼうとして、「国民全体」を不幸に陥れる可能性でもあるが、基本的には、「ポピュリズム(大衆迎合主義)」という「選挙に勝つためには、大衆の喜ぶ政策を実施しなければいけない」という状況が、現在の混迷に関する、最も重要な原因の一つとも言えるようだ。つまり、「国家財政」を犠牲にしてまで、「選挙に勝つ方法」を選択している状況のことだが、この点については、「国民」にも、大きな責任が存在するようである。

また、「6月8日の日経新聞」では、「スクランブル」という欄で「米金利上昇、打撃読めず」という記事が掲載されているが、この中で、米運用会社の「ピムコ」は、「世界経済と金融市場は、劇的な変化を伴う新しい局面に入る可能性がある」とコメントしている。つまり、これから想定される「世界的な金利上昇」については、「デリバティブ(金融派生商品)の完全崩壊」など、人類が、今までに経験したことがないほどの規模で、世界の金融市場に、大きな変化をもたらす可能性が危惧され始めているのである。

ただし、「日経新聞」としては、今までと同様に、「米金利上昇で、世界景気が低迷し、新興国で混乱が起きると、資金はリスクオフに向かい、円高や世界株安を招く可能性がある」ともコメントしている。つまり、今までと同様に、「大恐慌シナリオ」を想定しているようだが、この点については、今までに詳しく申し上げてきたとおりに、「20年前の話」とも言えるようである。

現在、危惧すべきは、「通貨や政府に対する信用崩壊」がもたらす、未曽有の規模での「大インフレ」だが、不思議なことに、現在でも、ほとんどの人が、この点を憂慮していない。やはり、「心理的な慣性の法則」という「今まで経験しなかったから、今後も経験しないだろう」というような安易な思考法が、いまだに、人々を支配しているようだ。